真・MFC千夜一夜物語 第324話 MFCで液化が起きた!その4
MFCで液化ガスが再液化した場合の対応をお話ししてきました。
液化しないようにするには、MFCを低圧損構造にして、狭い空間から広い空間に液化ガスが抜ける際に生じる"断熱膨張"を食い止める事が重要です。
MFCのバルブオリフィスが一番あぶないところなのですが、それ以外にも狭い空間から広い空間に抜ける箇所があります。
そう、流量センサーですね。
MFCでもう一つ流速が大きく変わる狭い空間→広い空間という流路がある流量センサー。
既に何度かこのブログで解説しているように、市場に普及しているMFCのほとんどは巻線式分流構造の熱式流量センサーを採用しています。
この構造の場合、センサーチューブ径が0.35-0.7mmと非常に狭く、コンビを組む層流素子(バイパス)も細い流路の集まりで構成されています。
通常、こういったセンサーを液化ガス仕様で用いる場合は、対応が難しいモデルも多いのですが、中にはブロンコストさんのLOW-ΔP-FLOWシリーズのように、通常仕様モデルよりセンサー径やバイパスのキャピラリ径を太くした低圧損モデルをラインアップしているメーカーもあります。
(センサー径を変えたりすると、センサーと層流素子の分流比も変わりますので、コンバージョンファクターも低差圧モデル用に特別設定され管理されています。)
以前紹介したMASS-STREAMTMのようなインサーションタイプ熱式流量センサーはスルーフロー、分流の無い全量測定はセンサー構造になっています。
図にあるようにセンサー部の流路がストレートフローでシンプル構造なので、絞りが存在しません。
つまりここでの断熱膨張が生じにくい構造なのです。
ただしこの構造のセンサーは腐食性ガス用にメタルシール化するのが難しく、例えばMASS-STREAMTMならヒーター、温度センサーをSUSのスリーブで保護しているので、アンモニアや塩化水素程度でしたら耐えますが、根本の取り付け部分はエラストマーOリング材(バイトン、カルレッツ)を選択して使用する関係上、液化ガスで腐食性が非常に強いガス=三フッ化塩素やフッ酸には対応が難しくなってしまう弱点があります。
MEMSセンサを流量センサーに使用したマスフローも、スルーフロー構造モデルが多いのですが、こちらはMEMSセンサー自体の耐食性で更にガスを選ぶことになってしまいます。
対応流体として、"腐食成分(塩素、硫黄、酸など)を含まない乾燥気体であること"という前提がありますので・・・
なので、あまり液化ガス用というモデルを見る事は無いですね。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan