真・MFC千夜一夜物語 第540夜  高圧でのアプリケーション その6

2026年10月27日

本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
高圧での流体制御アプリケーションに関してお話ししましょう。

実は圧力変動だけではなく、MFCの製作仕様にあるガス種と異なるガスをMFCに流した場合でも同じようなハンチング現象が起きることがあります。
例えば窒素用のMFCに軽いガスの代表である水素を流した場合です。
この2つのガスは主に熱式流量センサーの感度としてのコンバージョンファクター(CF)は1近辺なのですが、流量制御バルブのオリフィス径は全く異なります。
水素は非常に狭いギャップでも大量に流れるガスで有名ですね。
その為、水素用のMFCのバルブオリフィスは、同じ流量レンジの窒素用よりかなり小さな径のものが選ばれます。
その逆で窒素用に製作されたMFCは水素用より大きな径のもので製作されています。
そのMFCに水素を流すと、同じバルブ開度では水素ガスが大量に流れてしまうのです

これをイメージにすると上の図のような関係になります。
図中のバルブ制御電圧(バルブ開度調節信号)と流量の関係は、あえて直線で表しています。
また窒素と水素の比率も正確な値ではありません。
あくまで説明用概念図と理解してください。

同じ径のオリフィスを使用して流量を制御する場合、水素だとバルブ制御電圧のかなりローレンジ側で対応することになり、バルブアクチュエーターの分解能的にはかなりつらい条件になる事がわかります。
流量信号と流量設定信号を比較し、同値になるよう開度を自動制御するのがMFCですが、ガスの特性の差から、こういった非常に狭いレンジでの制御を強いられることになると、制御分解能の限界でハンチングが発生してしまう事もあるのです。

こういった場合の対処方法は、前述と同様です。
水素ガスラインのレギュレーター(調圧器)を操作して供給圧を可能な範囲で下げることです。
差圧条件を小さく、MFCにとって楽にすることで、流量制御が安定する可能性があります。
もちろん本来は、ガス種に合った仕様のMFCを購入して、使用するのがベストです。
こういった対処方法はあくまで緊急避難的なもので、これを常用することを推奨するものではありません。

二次側が与圧条件になるガス計測&制御アプリケーションで特に顕著となるMFCの特性に関して解説させてもらいました。
圧力条件が大きく変動する条件でMFCを使用することがいかに難しいかを理解してもらえたら幸いです。
こういった大差圧や差圧が変動する条件での流量制御はブロンコスト(Bronkhorst High-Tech B.V.)の最も得意とするところで、Vary-Pバルブという特殊なバルブを搭載したMFCが存在しています。

Vary-Pバルブ搭載MFC【出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

このバルブは最低差圧6 bar(D)=0.6MPa(D)という条件がありますが、最大差圧400 bar(D)=40MPa(D)までの大差圧制御を可能にしています。(特別仕様で最大差圧700 bar(D)=70MPa(D)もあります。)
たとえば一次圧が40MPa(G)なら、二次圧は大気圧から39.4MPa(G)まで変化しても流量制御が可能なのです。

上図にあるように流量制御バルブの二次側に背圧制御弁があり、これの働きで流量制御バルブの一次圧(P1)が変動しても、バルブ直近の二次圧(P1´)を常に変化させることでP1-P1´=バルブ部の差圧条件を一定にしているので、流量制御バルブ自体は設定されたKv値に応じて安定した流量制御が可能なのです。
この構造ならば、P2がどれだけ変化しようと、流量制御バルブ自体の制御には何の影響もないのです。
MFCの流量制御バルブと組み合わせて使えるサイズで、流体圧を利用して作動する背圧制御弁を設計する技術力はすばらしいとDecoは思いました。
Vary-Pバルブ搭載製品は最小フルスケール10Nml/minから最大フルスケール100NL/minまでのMFCで製品化されているので、興味があればDecoまで問い合わせしてくださいね。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan & Safe TechnoloGy

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