真・MFC千夜一夜物語 第539夜  高圧でのアプリケーション その5

2026年10月20日

本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
高圧での流体制御アプリケーションに関してお話ししましょう。

差圧条件によるトラブルとその対処

本ブログでDecoは「MFCはいかなる温度・圧力変動にも影響を受けず、一定の流量を流す便利な機器ではない」ということを力説してきました。
この中で圧力条件に起因して生じる問題の原因としては、MFCのバルブ構造が密接に関係しています。
もっと正確に表現すれば、バルブを動かすアクチュエーターが関わっています。
MFCは予めバルブ設定でリフト量(バルブ開度)を決められています。
そのリフト量を全閉から全開まで全て使って流量制御することは、ごく稀です。(故にMFCのバルブの実際のKv値もしくはCv値だけで、そのMFCの流量制御最大値を求めることは出来ないのです。) 

なぜならばMFCのバルブは想定される最低の差圧でも、ある程度の余裕を持って、MFCの指定されたフルスケール流量を流せるように調整されているからです。
差圧条件が大きくなればなるほど、同じオリフィス径で同じリフト量ならば、流れる流量は増加していきます。
設定流量を保つためには圧力上昇に応じてリフト量を小さくしていく必要が生じますが、開度を小さくして流量を制御するのにはおのずと限界がきてしまい、種々の問題を発生させるのです。

問題の一つに挙げられるハンチングといわれる流量制御不良現象を説明しましょう。
MFCは流量センサーで測定した流量出力信号(PV)と、与えられた流量設定入力信号(SV)を比較し、制御バルブの開度調節信号(MV)を常に可変調整することで、PV=SVになるよう制御しているという解説は、既に何度かお話ししてきました。
ハンチングは、その制御が何らかの原因で成立しない場合に発生します。
MFCの流量出力信号が激しく振れ、実際の流量制御も全く安定していない現象を指します。
ハンチングの発生原因で結構多いのが、差圧が大きくなったことでバルブ制御の分解能の限界となり、うまく流量制御できなくなって発生するというものです。

図のバルブ制御電圧(バルブ開度調節信号)と流量の関係は、あえて直線で表しています。
実際はこのようなきれいな直線になる事はないので、あくまで説明用の図と理解してください。
図中にあるように、MFCは流量制御バルブのアクチュエーター制御信号を変化させることでバルブリフト量を可変し、流量調整を行っています。
差圧が大きくなる程、MFCのバルブはどんどん小さなバルブ開度で流量制御をすることになります。
言い換えるならバルブリフト量の全てを流量制御に使えなくなって、下の方の狭いレンジでの制御を強いられるということになります。
バルブの制御信号をある割合変動させた際のバルブリフト量の変化自体は一定なのにもかかわらず、リフト量の変動に対する流量の変化の割合は差圧の拡大に伴い大きくなる為、流量を安定させる制御はどんどん難しくなっていきます。
そして、それがバルブ制御信号の分解能上の限界領域に達すると、調整不可能=ハンチングとなるのです。

ハンチングが発生した場合の対応としては、ガスラインのレギュレータ(調圧器)からの供給圧を低くすることで解決できます。
MFCが電気的に故障しているような他の原因の場合はダメですが、差圧が大きくて制御が辛くなっているだけならば、差圧を小さくしてやれば余裕を持って制御できるようになるのです。
また、この方法はMFCでハンチングを生じている原因を切り分ける手法としても簡単、且つ有効なのでした。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan & Safe TechnoloGy

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