真・MFC千夜一夜物語 第526夜 MFM vs MFC その4

2026年07月13日

本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
今回はMFM vs MFCと銘打って、直接対決といきましょう。

MFCでのP制御における問題点は、PVがSVに近づくと、MVの伸びが鈍ってしまうことでした。
これはSVに近い状態でPVが安定はするが、永遠に「PV=SV値」にはならないということです。
このP制御における、PVとSVの差を偏差と呼びます。
P制御ではSVに近づけることまではできますが、SVとの偏差を0にできないのが問題だと言い換える事ができるのです。
この偏差をなくすために考えられたのが、積分動作(I動作)です。
I動作は偏差を時間的に蓄積し、蓄積量がある大きさになった所で、MVの操作量を加減して偏差を解消させるという動作をさせます。
このようにして、P動作にI動作を加えた制御をPI制御(比例・積分制御)と言い、一般的なMFCはこのPI動作で制御されている、と言っていいのでしょう。

PI制御は偏差を蓄積する分、PVがSVに合致するのに時間が必要になります。
MFCのように周囲の配管機器とガス供給系を形成している場合、それは色々と難しい問題を起こします。
MFC1次側で複数ラインを1つの調圧器(レギュレーター)で賄う際に、各ラインのバルブ切り替えによる消費ライン数の増加に伴う一時的な払い出し量不足や、二次側の真空チャンバー排気量のゆらぎによる二次圧変動のような突発的に強い外乱が発生した場合です。
PI制御では偏差を時間とともに蓄積し、その蓄積に応じて修正するため、元の値に戻すために時間が掛かってしまい、それが問題視されることになりました。

それに対する改善方法が最後に紹介するPID制御(比例・積分・微分制御)です。
しかしこのPID制御すらも万全ではないのです。
むしろ図中の微分動作にあるようなオーバーシュートを伴う急峻な波形を形成してしまうことで、二次側が真空チャンバーならば、その真空度を一時的に悪化させてしまったり、チャンバー内でパーティクルの巻き上げを起こす可能性があります。更にそれらを防ぐ為に装置のインターロック(PVをモニターし、SVの一定許容範囲を超えた際にアラームを立て、最悪ガス供給を断つ方向へ制御する。)を作動させてしまう要件になりかねないのです。
「MFCはPID制御されている」と表記されがちですが、実際の動作ではPI制御が主です。
そしてMFCの立ち上がり応答に関しては、PIDを用いるパターンは少ないと言えます。
その理由としてマスフローの主力流量センサーである巻線型の信号が決して速くはない事が挙げられます。
MFCでは流体制御システムとしての高速応答性能を得るためには、センサー出力波形をそのまま受け取るのではなく微分成分を合成したりするのですが、これでは前述のオーバーシュートが絶えない為に、制御開始時はSVの80%程度を目標値としてMVを自動的に開けていくような手法が織り込まれているものもありますし、それを段階的に可変させる制御のものもあります。

なかなか一筋縄ではいかないのが、流体制御という分野なのでした。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan & Safe TechnoloGy

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