真・MFC千夜一夜物語 第514夜 それはMFCでやるのは無理ですよ その5

2026年04月14日

本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
マスフロー(MFMとMFC)でこういうシステムを組んだが上手く動かない!」というユーザーからの声に対して、「それはちょっと無理ですが・・・」とDecoが答えた事例を紹介します。
(取り上げる事例は、Decoの経験のある事例のいくつかを組み合わせて、解説しやすいようにアレンジした架空のものです。)

④ そもそもMFCではランプ制御はできない

チャンバーを昇圧するようなプロセスは、ガス導入開始時に最大差圧で、完了時に最小差圧となるという差圧が変化するプロセスです。
そもそも差圧が0.5MPa(D)以上変動するプロセスに対応できる国産MFCは少ないので、その点からDecoはブロンコストの高差圧対応ができるMFCを薦めています。
でも、今回のようにユーザーから「MFCでランプ制御(ランピング)した」との要請があった場合、Decoは「そもそもMFCでランプ制御をさせるのは難しいですよ。」と答えることにしています。

ここからMFCでのランプ制御に関して解説しますね。
そもそもランプ制御とはなんでしょうか?
ランプ(Ramp)とは制御分野におけるランプ関数(ramp function)を用いた制御の事であり、正規化線形関数ともいいます。
ある時刻まで0であったもののが、それ以降は時間に比例する関数のことです。
ランプ関数という名前は、グラフの形状がランプ(傾斜)になっていることが由来です。
ランプ関数のように、ある時間以降、時間に対して正比例で入力が増えるものをランプ入力、またこのような入力に対する応答をランプ応答と言います。

ちなみにランプ入力に対してステップ入力があります。
ステップ入力とは、ある時刻で高さ1の階段(ステップ)の入力を行うことです。

グラフの形は、ランプ関数のような傾斜ではなく階段状になります。
MFCで使用される応答はステップ応答です。
ランプ制御は、たとえば温調器において、ある一定の速度で徐々に温度を上げるときなどに使われています。
流量制御でも、下流側のチャンバーの圧力を急変させずにガスを導入したい場合や、高圧容器へガスを充填するのに一定の傾きで流量を制御したいというアプリケーションは存在していて、その解として今回のようにランプ制御を要求されたユーザーさんが居られたのだと思うのですが、実はこういったSVを刻々と変化させる方法は、熱の伝導を原理に用いる熱式流量センサーを積んだMFCが最も苦手とするところです。
ランプ入力のような波形でSVを可変させながら入力した場合、大概のMFCはオーバーシュートやアンダーシュートをくり返しながら流量制御をすることになります。
SV通りにMFCを動かしたいのに、制御はかけ離れたぐしゃぐしゃの波形になってしまうのです。

そもそも現行世代のMFCはその熱式センサーの応答の遅さに対して、ピエゾやソレノイドのような高速アクチュエーターとの危ういバランスで成り立っています。
こういた制御でSV=PVとなるように制御しようとしても、その前にSVはまた変化してしまい、結果として常にSV>PV状態で流量制御を行うことになってしまうのです。
また、配管全体のボリュームを考慮すれば、MFCで流量制御が上手くできたとしても、既に流れてしまったMFC下流のガスは制御されるわけではないので、より一層チャンバーに入る実ガス流量波形は乖離することになります。
故にMFCのPVの波形が、綺麗なランプ制御の波形に合致したとしてもチャンバーにその通り流れ込むことにはならないのです。
これはMFCチャンバーや容器の距離が遠ければ遠いほど酷いことになります。

ランプ制御に近づける為のMFCに望ましいSVの入力パターンは上図の破線のようなステップ入力での対応になります。
では、流量制御ではランプ制御は難しいのかと言えば、そうではないのです。
あくまで流量センサーと流量制御バルブそしてPIDコントローラーが同居しているMFCというパッケージでは苦手だと言うだけの話です。
そもそもMFCの熱式流量センサーという応答の遅いセンサーで、SV=PVにさせる比較制御が邪魔をしているだけなので、装置側はランプ制御である時間でこの設定値迄可変するという制御を行うと決めているのだから、本来ならMFCの中でSV=PVとなるよう比較制御を行わせる必要はないのです。
これは流量制御バルブをダイレクトに装置側のPLC等で制御するモードをMFCに追加すれば対応が可能になります。
つまり内蔵した流量センサーに基づいて流量制御させるモードと、外部からバルブ制御信号(M.V.)を入力してダイレクト制御するモードを、ネットワークを介して切り替えてやればいい事になるのです。
DecoがこのモードをMFCに持たせることを推進している事を記憶している読者もおられるかと思います。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan & Safe TechnoloGy

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