真・MFC千夜一夜物語 第509夜 MFCを取り巻く環境での事故事例 その5

2026年03月10日

本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
マスフロー(MFMとMFC)が使用される環境での事故事例を紐解き安全に関して解説していきましょう。

リークレートに関してマスフローのカタログ仕様表記は、おおよそ2つグループに分かれます。
メタルシールモデルが1×10-12Pa・m3/sec(He) エラストマー(ラバー)シールモデルが1×10-9Pa・m3/sec(He)といった値の近傍に収斂する形です。
メタルシール方法は何通りかあるのですが、SUS316Lのブロックとフランジを研磨し、最後はラッピングで鏡面状態にしたパーツ同士を、シール材である金属OリングもしくはCリングを挟んで、規定トルクでボルト固定する方法が多く、その際に締め付ける力に対するOリング(Cリング)の反力で流体の漏れをシールしています。

簡単に図示すると上図左のようなイメージです。(本図はあくまでイメージであり、特定のメーカーの構造を図示したものではありません)
勘違いしてはいけないのですが、メタルシールとはシール材だけを金属シールに変えれば、それでいいものではありません。
受け側のボディ、フランジの設計もメタルシール専用ですし、SUS316Lという加工の難しい材料を精密加工で削り出し、シール部を研磨、ラッピングで仕上げる必要があるので、発売当初は非常に高価なシール方法でした。
メタルシールの場合、リークレートはHeリークディテクターの検出限界がそのまま記載されていることが多く、"実際はもっと漏れてないレベルだが、ここまでしか検出できない"という意味です。

このリークレートは(He)と記載があるようにヘリウムリークテストであることを示します。
ヘリウムが使用されるのは、二番目に小さな原子で、わずかな隙間をすり抜ける事ができる性質がリーク検知に重宝だからです。
しかし、ヘリウムの価格は昨今高騰しており、非常にコスト高なガスです。
なぜ一番小さくて価格もヘリウムよりは安い水素でやらないのかというと、読者の皆さんにはわかりきった話でしょうがが、非常に燃焼・爆発しやすい水素は流石に用いたくはないからですね。

マスフローの出荷検査の場合、図の右にあるような真空フード法でヘリウムリーク試験が行われていることが多いです。
他の手法として吹き付け法やスニファー法がありますが、マスフローが比較的小型の機器であることと、出荷時の単体製品としての全リーク量を計るために真空フード法が一般的になっています。 配管機器の外部リークは人命に関わる事故を引き起こす可能性があります。
人間は酸素20%程度にブレンドされた空気中でしか生きられないので、不活性ガスである窒素100%環境では窒息してしまうのです。
ましてや半導体で使用されるガスには、毒性や可燃性、爆発性のあるガスがごろごろしています。シラン(SiH4)は、1%未満まで希釈しても、空気に触れると自然発火することがある材料です。
Decoが駆け出しのころ、「外部リーク事故を一度でも起こしたマスフローメーカーは出入り禁止にするからな!」とまで、半導体デバイスメーカーの怖い方々に脅されたものでした。
それだけに、全数Heリークテストを行い、その結果を検査成績書に記載して納品するというのが当たり前のルールになっているのです。
リークテストに関しては、参考資料としてSEMI E16 - マスフローコントローラーの漏洩率の決定および記述のガイド を一読下さいね。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan & Safe TechnoloGy

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