真・MFC千夜一夜物語 第463話 質量流量を用いた最新アプリケーションは? その7
本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
ブロンコスト(Bromkhorst High-Tech B.V.)のES-FLOWシリーズは本ブログでも以前紹介した事がありますね。
今まで熱式、コリオリ式を中心にマスフローを製品化してきたブロンコストには珍しい超音波式流量センサーを採用した製品です。
超音波流量計は既に市場に数々のメーカーが参入していて、ニッチなターゲットを狙うのを信条とするブロンコストとしては意外な新製品であるという印象を受けましたが、製品ラインナップとして考えると、液体流量測定においてコリオリ式と熱式の間の流量&圧力損失レンジをフォーカスしていて、また発売当初から微小流量液体流量制御=フローコントローラーとしてアプリケーションもカバーしていました。

出典:ブロンコスト・ジャパン(株)
上図でES-FLOWのセンサー部の構造を示します。
接液部はステンレス(316L相当)で、ゼロデッドボリュームのストレートセンサーチューブにより、セルフドレイン構造になっています。
オービタルTIG(Tungsten Inert Gas)溶接を採用することで、洗浄しやすい清潔なサニタリー仕様継手を使用可能です。
それ以外の工業用途では、コンプレッション継手を標準装備しています。
ハウジングの侵入保護規格はIP67であり、ユーザインタフェースは静電容量型タッチスクリーンを採用、情報の読み取りと機器の操作のためのTFTディスプレイを備えています。
そしてブロンコストのMFMタイプの製品の際立った特徴としてPIDコントロール機能を搭載していることが挙げられます。
一般的なMFCは、流量設定信号(SV)を入力して、流量センサーの流量信号(PV)と比較して値が一致するようにバルブ制御信号(MV)を可変します。
しかし、MFMや流量計は本来の用途が流量測定である為、本体内にPIDコントロール機能を持たせたものはあまり見かけません。
ES-FLOWは標準搭載されたPIDコントローラーを使用して比例制御弁またはポンプを制御することができるよう企画された珍しい製品なのです。
ドージングシステムのローコスト帯を担うセンサーとしての素質を最初から持たされていたのですね?ES-FLOWから回転数のダイレクト制御を行うので、下流側の配管抵抗が変化したり、ポンプが劣化して吐出量が減ったとしても、予め設定した流量を流すよう回転数を自動で上げてくれます。
セットアップはコリオリ式MFMで構築したドージングシステムと同様非常に簡単で、気軽に微小流量液体用ドージングシステムとして運用できます。
例えばパイロットラインで液材料の素性や混合比、そして運用条件が定まらない場合は、コリオリ式のドージングシステムを用いてレシピを決め、その後の大量生産では超音波流量計ベースのドージングシステムを大量に導入するといった考えもあるでしょうし、クリティカルな材料はコリオリ式、そこまで精度を要求しない材料は超音波式と言ったハイ&ローミックスな展開も考えられるのです。

出典:ブロンコスト・ジャパン(株)
そもそもドージングポンプやメータリングポンプの吐出する流量は正確なものと信じられてきました。
ポンプの1回転ごとに、ポンプは規定された体積流量の液体を送り出すはずです。
これにより、ポンプの回転数に応じて時間当たりの送液流量を求めることができる筈だと考えるのは決して間違ってはいません。
だが、現実の生産ラインで高い精度を常に維持し続ける事は容易ではなく、理想の流量からのずれが確認されていました。
それは様々なプロセス条件の変化(温度や圧力の変化、空気の混入、部品の摩耗、劣化)が要因となり、ポンプヘッド1回転あたりに送られる液体の流量に影響し、結果として僅かな誤差を生じていたのです。
その誤差は長時間の運転により積み上がった結果、大きなものとなっていきます。
こういった問題は質量流量計や、一部の体積流量計からの流量信号を用いてポンプを直接制御することにより避けることが可能になります。
個体差が大きく、品質レベルに至らないものは破棄しなくてはならなかったような生産ラインにコリオリ式MFMを組み込んだドージングシステムを投入する事でスループットも向上を果たせます。また、コリオリ式MFMのコスト面の負担を懸念する向きには、ES-FLOWのようなローコスト体積流量計との組み合わせでも充分ソリューションとなるいわゆるハイ&ローミクス的な提案も今回紹介させてもらいました。
進化し続けるドージングシステムは、今後益々アプリケーションを拡大していくとDecoは思っています。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan