真・MFC千夜一夜物語 第462話 質量流量を用いた最新アプリケーションは? その6
本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
コリオリ式マスフローを用いた流量制御技術の進化は製薬や食品製造ラインで添加物の正確な添加量を制御する工程で重用されています。
添加剤のドージングは貴重な材料の無駄を防ぐために、環境変化に影響を受けず長期に渡って高精度と高い再現性を維持したいからです。
ブロンコスト(Bromkhorst High-Tech B.V.)はLDM (Liquid Dosing Modules)シリーズと言う液体ドージングユニットを製品化しています。
その仕組みは図にあるように、PLCから流量指示を送り、それを受けたコリオリ式MFM mini CORI-FLOWが内蔵しているPIDコントローラーでダイレクトに液体注入ポンプ(例えばギアポンプ等)の回転数を制御するというものです。

工程のスループット向上を目的として個々のワークに対してキレのいい添加剤供給を行うべく、PLCでMFM下流の閉止弁の開閉制御を行っています。
これにより、従来はロードセルなどで添加剤を投入した結果をワーク全体の重さで測って管理していたのを、流しながら質量流量で管理できるようになりました。
ポンプ側もただの回転数制御ではなく、今流れ得ている質量流量に応じた繊細な回転数管理が加わることで、安定した添加剤供給が可能になります。
もちろんポンプの経年変化に伴う吐出流量の劣化に対しても、MFMからの流量信号との比較制御により、回転数が適切に補正されるので、結果としてポンプのメンテナンスタイミングが来るまでは、環境変化や経時変化の影響を受けにくいドージングシステムが構築されるのです。
更にメイン材料ラインの増減に合わせて、添加剤ラインの流量も変動させることで、混合比率を一定に維持するマスタースレーブ運転での制御への拡張も可能です。当然、流体の物性変化に影響受けないコリオリ式MFMを採用しているため、添加材種の切り替えにも速やかに対応が可能です。
こういったドージングシステムの提案が拡がる中で、顧客からシステム導入コストを懸念する声が聞かれるようになってきたようです。
確かにこのドージングシステムの効果は大きいのですが、効果が大きければ大きい程、工場としては本格的に多数の生産ラインへ導入していきたいと考えますね?
そうした場合に高価な流量計であるコリオリMFMのコスト負担が、そのラインの数だけかかることになります。
そこでブロンコストはコリオリ式MFMがマストではないプロセス向けの超音波流量計ES-FLOWシリーズを使ったローコストなドージングシステムを提案しています。

出典:ブロンコスト・ジャパン(株)
質量流量計の利点である液種を選ばず質量流量測定を失う事になるが、単一の液種に固定できる場合ならば、体積流量計でも代用が効くという発想ですね。
言わばドージングシステムでのハイローミクス戦略です。
詳細は次回お話ししましょう。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan