真・MFC千夜一夜物語 第461話 質量流量を用いた最新アプリケーションは? その5
本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
コリオリ式MFMによるポンプ制御アプリケーションをご紹介しましょう。
完全な質量流量計であるコリオリ式マスフローを用いた新しい流体制御技術がブレイクしてきているます。
最新の製薬用途やリチュームイオンバッテリー製造工程で採用され世界的に大きな需要を生み出しているのが、コリオリ式MFMを用いたポンプの回転数制御アプリケーションです。
コリオリ式MFMとギアポンプを組み合わせて、ギアポンプから吐出される流量をコリオリ式MFMで質量流量測定し、あらかじめ与えられた設定流量になるようフィードバック制御でポンプの回転数を可変することで、脈動の少ない定量液体搬送を可能にしたドージングシステムを提供できるようになったのです。
これは質量流量ポンプの誕生ですね。

【出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

ブロンコスト(Bronkhorst High-Tech B.V.)のコリオリ式MFM mini CORI-FLOWシリーズを使用した質量流量ポンプの構成を上図に示します。
本来流量測定ではなく流量制御ならば流量制御バルブの開度をフィードバックコントロールする液体用MFCがあり、それとポンプを接続すればよいのではないかと考えがちです。
しかし、ポンプは回転数を設定して、一定の圧力で液体を送り出そうとするのに対し、MFCはポンプの送り出した液体の流量を測定して、設定流量になるようPID制御でバルブ開度(=流路抵抗)を可変させてるというこの流量制御方式は、わざわざポンプが回転して送り出した液体を、MFCが流量制御バルブで制限することで必要な流量を供給しているのであり、ポンプとMFC、実は双方が流体を制御しようとしている事に気が付きませんか?
それでは無駄が多いですね?
「ならばMFMで測った流量と希望する設定流量が一致するようにポンプの回転数をダイレクトに制御してしまえばいいのではないか?」という発想が出てきても不思議ではありませんでした。
質量流量ポンプはそういった発想で企画されたシステムです。
元々、ブロンコストのMFMは流量を測定するだけでなく、PIDコントローラーを搭載することで外付けの流量制御バルブを制御することが可能な特長を持っていました。
それを応用してMFMからのポンプへダイレクトで流量制御信号を送っているのです。
MFMの流量信号(検出値=PV)を受けて、入力されている設定信号(目標値=SV)と比較して偏差を判断して、ポンプの回転数を操作すべく、制御信号(MV)を送っています。
本来この種の制御に必要な別置きPIDコントローラーを不要としているところが大きな特長で、ユーザーにとっては購入した機器を設置するだけで、複雑な設定は必要なく、すぐ使用できる利点があるのです。
ポンプで液体を流し込む場合、流量センサーを用いたフィードバック制御を行っていないと環境条件の変動(特に温度)、ポンプや配管のコンディションの経時変化により、流される液体の流量に大きな差が生じてしまうことがわかっています。
質量流量ポンプは読んで字のごとく「質量流量でフィードバック制御されるポンプ」です。
この利点は、不変の単位である"質量流量"を用いて流量を制御できることです。
ポンプの吐出量は、常に一定であると誤解しているユーザーは思ったよりも多いようです。
だが、現実には環境条件の変化や、経時変化、そして下流側配管抵抗の変化でポンプの産み出す流量は刻々と変化しています。
精密な微小流量液体分給には、コンディションを問わず正確な質量流量を測定できるコリオリ式MFMからのフィードバックによる回転数制御がマストとなる日が近づいているのではないでしょうか?。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan