真・MFC千夜一夜物語 第310話 MFCのボディは何でできているの?その2

2020年04月14日

マスフローコントローラー(MFC)マスフローメーター(MFM)のボディ材質としてよく用いられるSUS316Lですが、SUS316"L"と無印のSUS316の違いはご存じでしょうか?

SUS316LのLは"Low Carbon"のことです。

字のごとくSUS316からC(炭素)の含有量を下げ、Ni(ニッケル)を増やしたバージョンです。

出典:JIS G 4303 ステンレス鋼棒

オーステナイト系ステンレス鋼は750℃付近(600~900℃)に加熱されると、CとCr(クロム)が結合してCr炭化物が結晶粒界に析出し、結晶粒界が選択的に腐食されやすくなるそうです。
オーステナイト系は、ある程度Crが内在していることによって、高い耐食性が維持されています。
しかし、溶接時にCr炭化物が析出すると,その周辺では逆にCrの濃度が低下し、局部的に耐食性が低い領域ができてしまうのだそうです。
だからCの含有量を低減させることの効果が大きいのです。 

また、C量を低く抑え,Ni量を少し多くすることにより,焼鈍状態の硬度を低くし、加工硬化性が良くする効果もあります。


SUS316L VIMVAR材
通常のSUS316Lに対して、材料に含まれる不純物成分をさらに極限まで低下させた高品位な材料のことです。
VIMVAR材、真空二重溶解(ダブルメルト)材といった呼称で呼ばれます。配管施工でSUS316L配管を曲げ加工したりすると、表面付近に存在しているアルミナ等の非金属介在物が、曲がることにより割れてパーテ ィクルとなってしまうことがあります。
一度の曲げで数千のパーティクルが生まれてしまうこともあるのです。
そのため非金属介在物の少ないVIMVAR材が重用されるのです。

"SEMI Standard F20のUHPグレード" という表現で材料を指定されたら、これの事です。
【参考資料】SEMI Standard F20 - 高純度および超高純度の半導体製造アプリケーションで使用される汎用コンポーネント用の316Lステンレス鋼の棒鋼,鍛造品,押出成形品,鋼板,鋼管の仕様

ちなみにSUS316Lは、半導体プロセス用配管・機器に関してはマスト材料ですが、SUS自体がそうである以上に粘りが強く、加工治具の消耗が早いので、決して加工性は良好ではありません。
工具の摩耗が早い=加工が高くつくことで、当初は有名でした。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan