真・MFC千夜一夜物語 第309話 MFCのボディは何でできているの?その1

2020年04月07日

マスフローコントローラー(MFC)マスフローメーター(MFM)を手に取って持ったことがある方は、意外に重い事に驚かれたことがありませんか?

通常の1SLMクラスのMFCでも幅80mm×奥行30mm×高さ120mmくらいで優に1㎏は越えます。
大流量向けのMFMですと、配管径が太くなりますので、さらに重くなります。
ウエハータイプ(写真右)のようなフランジ部品が付いていないタイプはまだよいのですが、フランジタイプ(写真左)だと持ち上げるのに、相当気合を入れないと、腰を壊してしまいます。

【出展:ブロンコスト・ジャパン(株)】

なぜそんなに重くなるのか?それはマスフロー(MFCとMFMの総称)のボディ=接ガス部分を構成する材質が、ステンレスだからです。
なかにはアルミで軽量化したものもありますが、ほとんどがステンレスで構成されているからです。
アルミの比重が2.7に対して、鉄が7.9、ステンレスの比重は0.793~0.8で鉄に近いです。

SUS316Lとは

今現在、マスフローで使用されるステンレスは、SUS316Lが多いです。
半導体先端プロセスでは、ただの316Lではなく、VIMVAR材という特殊な手法で作られるものもあります。
その他にはSUS304等もありましたが、現在では少なくなってきたと思います。

皆さんのステンレスに対するイメージに "錆びない" というのがあるかと思います。
これは正解で、ステンレスは非常に腐食に強い金属です。
ステンレスは、耐食性を向上させる目的で、鉄を主成分としてCrやNiを含有させた合金鋼です。(Cr含有量が10.5%以上と多い。)

その優れた耐食性は、表面に形成される"不動態皮膜"のお陰です。
この皮膜は、10~30Åの酸化膜であり、破壊されてもすぐに復活します。そのキーとなるのが不導体皮膜を形成しやすいCr, Mo, Niです。
特にSUS304には含まれていないMoは、不動態皮膜の局部補修力があるそうです。

そしてSUS316Lの"L"がここで非常に重要になってきます。
このLの意味するところは?次回お話ししましょう。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan