真・MFC千夜一夜物語 第303話 MFCとは不思議な存在 その3
前回は流量制御に関して、手動制御と自動制御のお話をしました。
自動制御では流量値を電気信号、もしくは通信で発信できる流量計(センサー)と、同じく電気信号や通信で動作する自動制御弁を調整計と呼ばれる機器に接続することで、流量計からの検出値と目標値を①比較し、それらの偏差を②判断し、自動制御弁の開度を③操作する事で自動制御を行います。これが計装業界では一般的な機器の配置です。
マスフローコントローラー(MFC)は、この自動制御に必要な機器の組み合わせを、一つのモジュールにまとめってしまった機器なのです。
下図にその流れをまとめておきましょう。
ここで勘違いしてはいけないのは、「手動制御が自動制御に劣る」「一体型のMFCの方が優れている」と考えてしまうことです。
手動制御は自動制御のように「人」を廃除することはできませんが、環境条件等が大きく変動する要素が無い場合は、ローコストで設置できる利点を活かせます。
制御させることが少ないので、人が介在するのが立ち上げ時と、点検時だけでいいような場合、ワンショットの実験等ですぐラインを解体してしまう場合が挙げられます。
また、一体型にする利点はシステムの小型化や、個々の機器を組み合わせるより設置・調整の手間がかからず、しかもローコストで調達できる利点があります。
ですが、一体型であるが故の問題点というものも存在するのです。
たとえばこういった状態でガスを導入する場合です。
よくある事例で、このブログでも何度もご説明していますが、流量設定信号(SV)が0以外のある値でMFCに入力された状態で、何らかの理由(図では空圧弁へ圧縮空気を送る電磁弁が閉、従って空圧弁も閉状態)でガスの供給が遮断された場合、MFCの調整計はSV>流量信号(PV)の状態をSV=PVとすべく、バルブ制御信号(MV)を増やしますが、当然SV>PVは解消されないので、バルブ開度最大でMFCが待機してしまっている状態です。
この状態で空圧弁を開いてガスを導入すると、全開で待機していたMFCの流量制御弁をすり抜けたガスが大きなガスサージを下流で発生させます。下流側にワークの入った真空チャンバーがあった場合、真空が破壊されたり、巻き上がったゴミがワークに付着したり、最悪はワークが破壊されたりする深刻なトラブルを招きかねません。しかし、これはMFCの不具合かというと、そうではないのです。
よく、「MFCが制御不良からオーバーシュートして不具合を起こした!」とユーザーさんからクレームを付けられるケースですが、実は制御不良ではないのです。そもそもMFCはSV=PVとなるよう(MFCにとって)正常な制御を行っている状態であり、空圧弁が開いた後、SV<PVの状態を感知して、SV=PVとすべく、MVを小さくしてバルブ開度を制御させたのであって、応答制御不良でオーバーシュートを起こしたわけではなく、急激なガスの侵入に対して制御が間に合わなかった分がガスサージとして下流に流れて行ってしまったのです。
一体型のMFCの内部で調整計が制御を行っていると、なかなかその動きが外から見えにくく、MFCの制御不良、オーバーシュートによるものと誤解されてきた過去がありました。
対策はありまして、それはMFCに「自動制御をやめろ!」と指示することなのですが・・・
(次回につづく)
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan