真・MFC千夜一夜物語 第296話 流量とは?流量計とは? その5

2019年09月17日

渦式流量計

渦式流量計は、管流路に置かれた渦発生体から生じるカルマン渦のストローハル数を利用するので、カルマン渦流量計 とも呼ばれます。
(カルマン渦流はT・フォン・カルマン博士の命名です。)


下図にあるように渦発生体の後ろには連続した渦が生成されますが、流体の流れが低速時には、この渦の発生は不安定です。
従って安定して渦が発生する流速領域でしか使用できず、気体での使用、また液体でも低流量域での使用は難しい傾向があります。
しかしながら、レイノルズ数が同じならば、流体の物性に依存しないという測定原理上の特長を持つので、限定的には質量流量計と考えることも可能な流量計なのです。

カルマン渦の測定方法は、超音波を用いる方式と、歪みゲージを渦発生体に内蔵、もしくはその直後に設置する方式が存在しています。

カルマン渦流量計は液体、気体、だけでなく蒸気にも適用でき、流路中には渦発生体のみ設置されるだけで、羽根車のような機械的可動部が無いので経時変化が少なく、差圧式流量計と比較すれば圧力損失が小さい点で有利な方式です。

しかし、前述のとおり"レイノルズ数がある程度以上ないと測定ができない"為に、流量のダイナミックレンジ(測定可能流量レンジ)が狭いという弱点を持っています。
(誤解されがちですが、レイノルズ数が高くならなければいけないのは測定部の話で、渦発生体の上流は逆に整流して層流で導入する必要があります。つまり整流したきれいな流れに対して、渦発生体で生まれた渦だけを測定したいのです。)

現在では気体の測定に特化したカルマン渦流量計が自動車のエンジンのエアフローセンサーとして採用されています。
エンジンのアイドリング状態から最高回転数に至るまでの流入させる空気の流量比は実に40倍以上ありますが、超音波方式による検出と渦発生体の構造を工夫して渦を強化する事で可能にできたそうです。

カルマン渦流量計は、このように測定原理が持つ弱点そのものを補う新しい技術が工夫されてきており、さらなる進化が期待される流量計なのです。

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