真・MFC千夜一夜物語 第288話 フィールドバス vs 産業用イーサーネット vs マスフロー!その3

2019年07月16日

フィールドバスと産業用イーサーネット その2

産業用イーサーネットは、下図の2018年の市場予測では、フィールドバスを凌ぐシェアと成長率になっています。

出典:HMSインダストリアルネットワークス 産業用ネットワーク市場シェア2018

イーサーネットは、LANで使用されている事もあり、なじみ深いコンピュータネットワークの規格ですね?
1983年にIEEE802.3として規格化された当初は2.94Mbpsだった通信速度も、1995年には100Mbps、1999年には1Gbps、2002年には10Gbpsとスピードアップして、オフィスや家庭で用いられています。
産業用イーサーネットは、オフィスや家庭で使われているイーサーネットを、工場の現場へそのまま持ってきたものではありません。
産業用途では各種センサーが受ける信号は刻々と変化するので、通信の実行の確実性、つまりある時間間隔内に操作対象機器に確実に通信を実行することを求められます。
従って産業用イーサーネットでは「リアルタイム性」が要求されることになります。
産業用イーサーネットがRTE(Real-Time Ethernet)とも呼称されているのはその為です。
また、生産現場環境はお世辞にも良いものではありません。
粉塵防水は当然として、更にオイルにまみれ、高温環境に晒され、ノイズの飛び交う過酷な環境下で使用される事になります。
信頼性に関する検証は厳しい条件が要求されます。
産業用イーサーネットは「標準イーサーネット型」「専用イーサーネット型 又は非標準イーサーネット型」に大きく分けられます。
標準イーサーネット型は、標準のイーサーネット技術を利用し、産業用イーサーネットのプロトコルを実装しているものです。

これはさらにTCP/IP やUDP/IPを利用するものと、高速化のためにTCP/IP処理をスキップしたものに分けることができます。

前者の代表的なものとして、PROFINETⓇ , EtherNet/IP (Ethernet Industrial Protocol), Modbus TCPなどがあり、後者にはETHERNET Powerlink , EtherCATⓇ (Ethernet for Control Automation Technology マスタ) , PROFINET IOⓇ などがあります。

専用イーサーネット型は、高速・高精度な同期制御を実現したり、固有の冗長化システムを提供したりするために、専用のASIC(Application Specific Integrated Circuit)もしくはFPGA(Field Programmable Gate Array)を採用しています。

専用型では、TCP/IP通信にはゲートウェイが必要になります。

代表的なものには、PROFINET IRTⓇ , MECHATROLINKⅢ , CC-Link IE , EtherCATⓇ(スレーブ), SERCOSⅢ などがあります。
産業用イーサーネットの通信規格は、国際標準であるIEC規格においてIEC 61784-1/2でまとめられているので、参照してください。

工場現場での通信に関してフィールドバスの次世代通信規格として産業用イーサーネットの採用を考える人が増えているのが、上図のシェア推移を見ても理解できます。

2018年で、ついに産業用イーサーネットはフィールドバスとの比率を逆転する訳なのですが、その理由として挙げられるのは、データー(情報量)の増加です。

デジタル化により機器の能力が向上するのはマスフローだけではありません。
温度、圧力の信号はポイント毎にセンサーが配置されています。
それら機器からの情報をリアルタイムで吸い上げ確実に処理をするにはフィールドバスでは対応しきれないと予想されているのです。
その為、従来のフィールドバスを置き換えるだけでなく、しばしば継続して利用できる仕様であることも、産業用イーサーネットには望まれています。

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