真・MFC千夜一夜物語 第286話 フィールドバス vs 産業用イーサーネット vs マスフロー!その1

2019年07月02日

さて今回からマスフロー(MFCとMFMの総称)のデジタル通信に関して解説しましょう。

デジタルマスフローの通信に関しての解説は既に何度か行っています。
2013年8月の第101夜で 
"考えてみれば世の中が急速にネットワークとの親和性を高めている現代、「MFCもデバイスレベルにこだわらず、コントローラーレベルのEthernet(Giga Bit Ethernetクラス)でいいのではないのか?」という声を聞くこともあります。革に対しても敏感でないいけないのかもしれません。そういった意味でデジタルMFCの今後の動向に注目ですね。"
と、Decoは語ったのですが、そこからほぼ6年が経過して、フィールドバスと産業用インターネットの市場シェアは大きく変動してきています。

その動きの中で、マスフローは今後どうあるべきなのか?を考える為にも改めて解説をしていきましょう?

3年前、オランダのブロンコスト社(Bronkhorst HIGH-TECH B.V.)のトレーニングに出席した際に、現在出荷されるマスフローのアナログ/デジタル比率をインタビューしたところ
"デジタルに決まっているだろう?"との回答でした。
改めて「日本向けではどうか?」と尋ねると、ニヤリと笑って、
"日本はまだまだアナログが多いね。なぜなんだい?" と、逆に質問を受ました。

海外、特にEU圏では、もうアナログマスフローの市場は無いというのが彼らからの意見でした。
それはDecoにとってかなりショッキングな出来事でして・・・

ここでデジタルマスフローに関して振り返りましょう。
本来マスフローが最初に世に出た1970年代のI/O(Input / Outputの略)はアナログ信号で、内部のPID制御回路もアナログでした。
マスフローが誕生した頃には、事実上アナログ信号での制御系しか存在していなかったのです。I/Oで使用されるアナログ信号に関しても、半導体製造装置分野では、電圧信号の0-5VDCが主流でした。
それに対して計装業界を中心に「ノイズ耐性から考えて、電流信号4-20mAにすべきでは?」という動きがあったのですが、マスフローメーカーのメインマーケットが半導体製造装置向けで、ケーブルの引き回しもほとんどが10m以下であった為、必要性は無いという考えが大勢を占め、0-5VDCがマスフローのI/Oの標準と思われてきました。

デジタル制御化されたマスフローは日本では1990年に販売開始されましたた。
その画期的な第一世代デジタルマスフローで提唱されたのは、デジタルPID制御を行い、デジタル通信I/Oを備えたマスフローです。

デジタルマスフローは、デジタルPID制御により応答性と精度性能の改善がめざましく、特にマルチPID定数による低設定時の応答性能向上はスループット向上を求められるプロセスでは注目を集めました。
それに加え、今までのアナログ信号で行ってきたマスフローとの信号のやり取りを、PCとダイレクトにRS232C通信を介して行うことが可能になる画期的な技術革新も盛り込まれていたのです。
それまでは製造装置側で信号をD/A、A/D変換して制御を行っていたのですが、これでダイレクトに装置のPLCとMFCがデジタル通信できる利点が生まれました。

ただ、ユーザーサイドに立ち返ってみると、当時はまだパソコンも今ほど一般的ではなく、どちらかというとまだマニアのものであり、それを駆使してマスフローを活用するというのは、なかなか敷居の高いものでした。
研究機関の実験用や、マスフローに詳しい設備担当の方が、デジタル通信を活かした独自開発のマスフロー管理システムを構築して、運用していた例(下図)はあります。 

しかしながら、マスフローメーカーの主力販売対象である半導体装置メーカー等は基本的に依然としてアナログマスフローが使用していました。

装置メーカーで本格的にデジタルマスフローを採用されるには、次世代デジタルマスフロー=DeviceNetTMなどのフィールドバス(Fieldbus)対応モデルが登場するまで待つ必要があったのです。
注記)DeviceNetはODVA(Open DeviceNet Vendor Association)の登録商標です。

あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan