真・MFC千夜一夜物語 第507夜 MFCを取り巻く環境での事故事例 その3

2026年02月24日

本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。今回からマスフロー(MFMとMFC)が使用される環境での事故事例を紐解き安全に関して解説していきましょう。

もう一つモノシランの事故事例を解説しましょう。
これはマスフローが原因の一つと考えられているだけに、本ブログ読者は要注意ですね。1982年宮崎県の半導体製造工場で、CVD装置の排気ダクトで残留したモノシランが発火しダクトから建造物に燃え広がる事故が発生しました。
重傷2名(内1名は後日死亡)中軽傷3名の事故となっています。
CVD装置のモノシランラインのMFCが流量を過大に供給したことにより、CVD装置チャンバーで反応しなかった多量のモノシランが後段にある排ガス処理装置へ流れ込みました。しかも、その排ガス処理装置(燃焼式除害方式)に供給される筈の酸素はなぜか止まっており、結果として未処理のモノシランが除害装置をほぼスルーして更に下流のダクトに侵入し、そこにあった空気と反応して自然発火したのが原因とされています。
この事例を受けてダクトの材質を不燃材にする、排気ダクトの共通化を避け1装置に1ダクトとする、ダクトに風速センサーを設ける、火災検知センサーを取り付ける等の対策が取られましたが、本ブログとしてはMFCが異常に過大なモノシランを流したと言われていることに関して、考察しましょう。

事故を起こしたMFCのセンサー不調の原因は微粉末による閉塞と推定されています。
MFCの流量センサーが閉塞して流れないのに、なぜ過大な流量が流れてしまったのか?本ブログの読者ならすぐわかるかもしれないが、初読の読者や、MFC初心者の為に説明をしましょう。
モノシランに限らず、半導体製造プロセスで使用するガスはクリーンなものが選定されていますし、フィルターにより異物の混入を幾重にも防ぐ構造になっています。
それなのに微粉末がMFCに侵入したというのは、おそらくはこの微粉末はモノシランが反応して生成したSiO2ではないでしょうか?
この微粉末がMFCに侵入しセンサーチューブを閉塞させている状況を図で示します。

分流構造をとる半導体用マスフローの場合、MFCに入ってきたガスはセンサーと層流素子(バイパス)に分流されます。
ここでセンサーに異物で詰まりが生じていた場合、センサー管にはガスは流れないので、センサーの上流から下流に熱移動が生じず出力は0となりますね?
分流した層流素子側の流路は詰まりでガスが流れ無いほどの状況ではなかったと仮定します。
MFCは測定値PV(流量出力)<目標値SV(流量設定入力)の状態をPV=SVと是正する為に、操作量MV(バルブ電圧)を増やして対応しようとします。
しかし詰まりで閉塞しているセンサー管に流れは生じません。
よって、PV=0の状況が変化する筈はないので、MVは最大値となってホールド、つまりMFCの流量制御バルブが全開で維持されてしまうのです。

これがこの事故で生じたMFCの異常に過大な流量制御を起こした不具合の原因と思われます。
つまりこの事故の原因はMFCに生じた不具合ではあるが、MFCの流量制御機能自体は正常動作を続けた結果だったのかもしれないのです。
Decoが現場を検証したわけではないので断言は避けます。
ここではあくまでMFCのセンサー管が微粉末で詰まった場合、"MFCとしては正常な流体制御"から大きな危険が発生することを説明し、注意を喚起したいための考察です。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan & Safe TechnoloGy