真・MFC千夜一夜物語 第499話 再度マスフローの弱点を語りましょう その7
本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
本ブログの最初の方でお話ししたマスフロー(MFMとMFC)の弱点解説をリニューアルしていきます。
4.流体温度と周囲温度の不一致による流量誤差
4つ目の弱点は、MFCが受ける温度影響に起因します。
前に「マスフローの流量検出方式が熱式である限り、当然温度影響は受けてしまいます。」という話をしたかと思います。
一般的に「温度・圧力影響を受けない」というのが質量流量計へのイメージですが、熱式に関してはけっしてそれは正しくはありません。
「温度・圧力の影響を受けないのが質量(流量)」であっても「質量流量計が温度・圧力の影響を全く受けない」わけではないのです。
熱式流量計は、熱の移動を量る方式ですから、当然その熱の移動を取り巻く温度は大きな変動要素であることを理解してくださいね。

温度影響という純粋なマスフロー周囲温度変化からの影響に関しては、マスフローの使用温度保証範囲や温度係数という決まり事を知ることで対応が可能です。
ところが今回説明する状況は、甚だ厄介で、こういったスペックを諳んじているだけでは解決できません。
なぜならばマスフローの温度補正が正常に機能しない状態、つまりマスフローが感知する周囲温度と実際の流体温度が乖離した場合だからです。
このような現象が生じた場合、どのようなトラブルが発生するのでしょうか?
一言でまとめるならば、MFCの制御流量異常、流量設定値=流量出力値≠実流量値という現象が起きることになります。(MFM)では流量出力値≠実流量値です。)
つまり、100SCCMの設定信号を入力したMFCは、100SCCM流しているという流量出力をリターンするが、実際には95SCCMや110SCCM流れてしまっているという現象です。
実はこのトラブルはMFCが引き起こすトラブルで、一番嫌忌される現象なのです。
なぜなら制御流量異常が起きている事がMFCの流量出力を確認しただけでは、全く把握できないからです。MFCを組み込んだ装置では、流量設定値≠流量出力値状態に陥った際は、ある範囲の管理値、禁止時間を予め設定しておき、それを超えた場合警報出力をだし、そこからシステムのインターロックが動作するものが多いです。
だが、この種のトラブルは、その仕組みでは全く感知できないのです。
「実験データを見ると、どうも夏場にMFCのガス制御がおかしくなっている・・・」
「冬場にMFCを使用するラインで作られる製品の歩留まりが悪い・・・」
このような現象に悩まされた経験がある読者はいませんか?
なぜこういった現象が起きるのか?を以下に説明します。
この背後にあるのは「熱の移動を感知するセンサーならば、温度変化という外界の熱環境の変化の影響を受けないはずはない。」という理屈です。
では、それはどういった仕組みなのでしょうのか?
次回、マスフローのセンサー温度とマスフローを通過する流体温度とのモデルで説明しますね。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan & Safe TechnoloGy
