真・MFC千夜一夜物語 第495話 再度マスフローの弱点を語りましょう その3

2025年11月05日

本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
本ブログの最初の方でお話ししたマスフロー(MFMとMFC)の弱点解説をリニューアルしていきます。

2.異物の混入による測定異常

マスフローにとって異物の混入は大敵です。
今回は、異物を液体や固形物と定義して説明しますね。(純度の高いガスに対する気体の異物というのもありえますが、その場合は混合気体でのCF問題に近いです。)
この問題はマスフローの心臓部である流量センサーの構造に起因しています。

出典:ブロンコスト・ジャパン(株)
動画はこちらから


巻線型分流計測タイプの場合、ほとんどのメーカーが上に挙げましたブロンコスト製MFCと似通った構成になっていて、流量センサー管の内径は0.3~0.8mm程度しかありません。
層流素子(バイパス)としてセンサー管とガスを分流する部分も、センサー管と同様サイズの細管を複数本数使用、またはそれらを代替できる狭い流路の構造物を用いています。
更にMFCの場合、流量制御バルブのオリフィスの径はそれと同等か、より小さいことが多いのです。こういった狭い箇所に異物が入り込めば、それが原因で問題が発生するのは自明ですね?

センサー部に異物が混入した場合、どのような現象が発生するかを説明しましょう。
センサー管が完全にふさがれた場合、センサー管へのガスの流れが閉ざされるために、センサーの出力はガスがいくら流れてもほぼ0となってしまいます。
MFMの場合は、出力がゼロに近くなるで済むのですが、MFCの場合は問題が大きくなります。
どれだけガスを流しても、流量センサー出力が0だと、MFC内部の制御系では流量設定信号入力>流量信号出力の関係となり、制御流量値が設定値より少ないと捉えたMFCは流量制御バルブ開度を最大まで開いてしまい、ガスの供給圧力に応じた多量のガスが流れ続ける事になってしまうのです。
また、閉塞が生じずともセンサーの流路抵抗が製造時よりも大きくなれば、センサーと層流素子との分流比が変化してしまうため、実際に流れるガス流量よりセンサー出力は小さく指示されてしまいます。このことによりMFMでは実流量>流量出力という不一致が生じ、MFCでは、制御流量>設定流量という問題が生じます。
層流素子が閉塞した場合、これは流量レンジによりセンサー管に対して層流素子の流路形状が異なるために、センサー管ほどストレートな問題は起きないのですが、層流素子の何本かが閉塞することで、センサー管との分流比が変化すれば、やはり流量異常が発生します。
発生する異常の傾向としては、センサー管閉塞時と逆になる事が多いですね。

一部のマスフローの一次側にフィルターを設置した構造になっているものもあります。
これを用いて異物をトラップさせればよいという意見もあります。
だが、マスフローに内蔵したフィルターの本来の目的は、流体を整流することでセンサー菅へ流体を層流状態で送り込むことです。
異物からセンサー管や層流素子を保護するのはあくまで副次的なものであり、このフィルターで一時的にはトラップできたとしても、配管ラインからマスフローに継続的な異物の混入があった場合、どんどん異物がフィルターに堆積して困ったことになります。
ほとんどのマスフローに組み込まれたフィルターはユーザーレベルで定期的な交換ができる構造にはなってはいないので、ここはむしろマスフローの上流に別途独立したフィルターを設置するのが正しい用法なのです。
一部のマスフローメーカーでは、流量レンジ毎に取扱説明書に推奨するフィルターの濾過精度を記載してあり、これを参考にフィルターのろ過精度を確認、選定して下さいね。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan & Safe TechnoloGy