真・MFC千夜一夜物語 第491話 液体用質量流量計について話しましょう その5
本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
今章では液体用質量流量計(熱式)に関して解説しましょう。
コリオリ式から熱式に戻ります。
そもそも熱式センサーが液体に不向きな理由として、CF以外には気泡が混入したときの出力異常が挙げられます。
液体を測定している熱式センサーに、気泡が混ざった液体が入り込んだらどうなるでしょうか?
気泡といっても、それは立派な気体です。
つまりその瞬間のセンサー付近は、液体と気体が混合した状態の流体が存在していることになります。
液体と気体では単位体積当たりでの熱容量に大きな違いがありますから、流量センサー内を液体が通過した時と気体が通過した時では、ヒーターから奪われる熱量は大きく異なります。
これを流量信号として出力すると、当然液体用にセッテイングされたセンサーにとっては、液体が流れた際に生じるべきレベルでの下流の温度>上流温度という関係が大きく崩れ、異常な値を出力してしまうことになるのです。
このように気泡が入ると熱式流量センサーは正確な流体の流量測定はできなくなります。また、この流量センサー出力を基にして、比較制御回路を組んで流量制御バルブを開閉する場合、つまり液体用MFCとして流量制御を行う場合は制御がハンチングして使い物にならなくなってしまうのです。
「気泡が出る液体なんて希でしょ?」と誤解があるかもしれませんが、むしろ気体が溶け込んでいない液体が希です。
確かに液体を充填され安定したボトルの状態では気泡の存在はわかりにくいですが、配管内を搬送される際に、液体にかかる圧力を低下させたり、温度を上昇させたりするようなポイントがあった場合、気泡は発生するのです。
温度を上げた場合というのは、沸騰する前のヤカンの中の水を考えてもらえばいいです。また、キャビテーションという圧力低下による現象もあります。
これはベルヌーイの定理で説明されます。
例え常温下であっても、流路が急に狭くなり、流速が上がって、液体の圧力条件がその液体の飽和蒸気圧以下に低下することで、液体は沸騰するのです。
気泡問題は、熱式センサーを液体で使用する際には厄介な存在です。
液体用マスフローにとって気泡によるトラブルは避けがたいトラブルです。
流量出力が液体と気体により熱を奪われる量が大きく異なることから生じるハンチングは、液体MFCでの流量制御が破綻を招きます。
それだけではありません。
例えば積算流量管理で、ある目標値の液体をボトルに充填するようなワークではオーバーフローしてしまう可能性もありますし、液体MFCの下流に気化器を設け、常温では液相の材料を気化して用いるような半導体製造装置成膜プロセスでは、ハンチング制御不良から一気に流れ込んだ液体が気化器内で気化できずに、最悪はチャンバー内に到達してしまうことで深刻な問題を引き起こすこともあるのです。
熱式液体MFCを使用される場合は、特に気泡対策が肝心になるのです。
その対策に関して、次回お話ししましょう。

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