真・MFC千夜一夜物語 第490話 液体用質量流量計について話しましょう その4

2025年09月23日

本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
今章では液体用質量流量計(熱式)に関して解説しましょう。

と言いながら・・・今回は熱式の解説から外れます。
コリオリ式も完全無欠なわけではありません。
やはり弱点は存在しています。
そのお話をしておきましょう。

弱点にはやはりコリオリの長所を産みだす流量センサーの測定原理が絡んできます。
熱式の弱点は熱影響であったのと同じく、振動系のコリオリ式の弱点は、やはり振動なのです。
コリオリ式流量計の中でも特に微小流量域を得意とするブロンコスト(Bronkhorst High-Tech B.V.)のmini CORI-FLOWシリーズのように流量レンジによっては内径1mmを下回る細径のステンレスチューブを使用している場合、コリオリ式マスフローにポンプが近接して設置されていて、しかも設置が同じプレート上や構造体の中だった場合、振動の周波数が干渉するとコリオリ式センサーに影響を及ぼすことがあります。
また、複数台のコリオリ式マスフローを近接して同じ構造体上に並べて設置しても相互干渉(クロストーク)を起こす可能性もあるのです。

出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

珍しい例では微小流量という事でコリオリ式マスフローと接続された1/8インチの配管がしっかり固定されておらずフリーになっていて、それが離れて設置したポンプの振動を拾って自身も振動してしまうという振動のアンテナのような役割を果たして問題を起こした事例もあります。
いずれの場合も振動の周波数によって、ポンプやコリオリが近接すれば必ず起きるわけではないが、不幸にもこういった現象に見舞われた場合は、どうしたらいいででしょうか?
ブロンコストはステンレスの重量ブロックにインシュレーター(制振材)を配したマスブロックを取り付けて使う事を薦めています。
これにより振動影響をかなり取り除く事が出来る場合があります。
先程触れた不具合事例は配管作業の必要性からマスブロックを外して使用した場合に発生したものであり、振動対策を取ればほとんど解決できるものでした。
マスブロックを使えば写真の「ように複数のコリオリ式マスフローを直近で並べてもクロストークはほぼ発生しません。

コリオリ式は圧力をかけてセンサー管を流体が流れさえすれば、質量流量で測定できてしまうと解説しましたが、オイル等で低温となると粘度が上がり、ゲル状から個体に至るような物性の流体を使用する際は気を付けなくてはいけません。
元圧を上げて押し込めるならばよいのですが、得られる圧力によっては低温環境では全く流れないと言った事態も想定しなくてはならないのです。
その場合は、配管やコリオリ式マスフローをヒーターで昇温する事で解決できるパターンがあります。オイルなどの粘性の曲線はある温度域で急激に変化する傾向があるので、その温度以上に昇温出来るなら特に高温にする必要はありません。
コリオリ式流量計は繊細な電気回路で構成されています。
例えばピックアップ部や、Ksバネ定数への温度補償回路ですね。
70℃を超える高温は電子部品にとっては本来避けるべき温度です。
ブロンコストのように、流体温度が70℃を超える場合、周囲環境温度を常温、もしくはそれより下げてほしい旨を取扱説明書で謳っているメーカーもあります。
安全面からも液体材料搬送系のヒーティングは、くれぐれも注意して行って下さい。
MFCが故障するのもつらいですが、大きな事故がおきてからでは、取り返しがつきませんから・・・

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