真・MFC千夜一夜物語 第489話 液体用質量流量計について話しましょう その3

2025年09月16日

本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
今章では液体用質量流量計(熱式)に関して解説しましょう。

熱式マスフローのコンバージュンファクター(以下CF)を巡る問題は、液体では気体の時よりも更にその混迷の度合いを深めていきます。
水やアルコールのような既知の材料ならばよいのですが、最新のプロセス用液体材料には物性が正確に把握しづらい、もしくは温度圧力で密度・比熱が大きく変化する材料が存在するからです。そういった"UNKNOWN"に近い存在に対しては熱式のキーとなる比熱を特定できないという問題が生じます。
こうなると熱式で流量の真値を議論するのはお手上げとなり、やはりコリオリ式を頼るしかなくなるのです。

コリオリは完全な質量流量計であり、CFが存在しません。
なぜならば上図にあるようにコリオリ式は流量式に流体の物性値を含まないからです。
故に流体の物性がよくわかっていない新材料や、刻々と組成や混合比が変化していくような流体でも質量流量測定が可能なのです。
CFが存在しないので、熱式のように流体の比熱に左右されたり、温度、圧力、あげくはMFCの分流構造でCFが複数存在してしまったり、その流体のCFがわからないと正確な流量が測定できないといった事は一切ありません。
圧力をかけてセンサー管を流体が流れさえすれば、質量流量で測定できてしまうというのが、コリオリ式の優れた流量計としての特長です。

この特性を生かして、熱式流量計のリファレンスとしてコリオリ式を運用しようという動きがあります。これは熱式だけでなく、体積流量計の超音波式に対しても同じ傾向があり、唯一完全な質量流量計がマスターの地位を確立したと言えるでしょう。
コスト的には高額となるコリオリと、比較すれば安価な熱式や超音波式を併用する事でCF問題を解決しつつ、高レベルな流量測定に対する投資額を抑えることも可能になるのです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan & Safe TechnoloGy