真・MFC千夜一夜物語 第487話 液体用質量流量計について話しましょう その1
本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
今回から液体用質量流量計に関して解説しましょう。
液体用流量計としては、色々な種類の流量計が存在しています。超音波式、渦式、電磁式、容積式、面積式、熱式、コリオリ式といったところが有名ですね。

本ブログでは質量流量計として、今までも熱式とコリオリ式がメインの解説を行ってきましたが、今回はどちらかというと近年コリオリ式に押されがちな熱式に再度スポットを当てていきたいと思います。
液体用流量センサーとしての熱式とコリオリ式の解説を行うに当たって、おさらいで両方式の原理を挙げておきます。

両方式を比較すると、熱式は気体に強く、液体を不得意としています。
これは液体が気体より熱応答性が悪いという問題や、測定時の気泡の影響問題が大きいためです。
それに対して、コリオリ式は液体には強いが、密度が低い状態の流体=低圧の気体は不得意です。
その為、熱式センサーは気体用で、液体用はコリオリの守備範囲だと一般的には理解される傾向があります。
それぞれのセンサー方式のウィークポイントの解説に共通するのは、実は流体の密度なことに気が付きましたか?
同じ流体でも液体と気体での密度は大きな開きがあります。
例えば水(H2Oの液体状態) 0.999972 g/cm3@4℃でほぼ1g/cm3。
それに対して水蒸気(H2Oの気体状態)では、0.598kg/m3(大気圧、100℃環境)です。
水は密度の大きさでいうと液体>固体>気体という珍しい順番になる異常液体ですが、液体と気体だけを見たら、その関係は他と変わりません。
ここで図の熱式流量計の基本式を再度見てみましょう。
質量流量を決める要素でΔTヒーター間の熱移動量の差に対して、分母側のCp:定圧比熱が大きな影響を果たすことになります。
定圧比熱とは一定圧条件で物質のある単位量を単位温度上昇されるのに必要な熱量です。液体は熱容量が大きい、逆に言えば熱応答性が悪い為にヒーターから与える熱量も増やさないと、大きな流量レンジを測定できないということになります。
そして圧力による圧縮性が大きい気体の測定が行えて便利であるという熱式センサーの利点は、液体の場合はその非圧縮性から、大きな利点とはならないこともわかりますね。
故に液体用熱式センサーは、その原理上微少流量に限られてしまうのです。
最近ではコリオリ式の微小流量化が進む中で、それでもコリオリ式では測定できないμl/min(毎分マイクロリッター)世界の流量計測には未だに熱式が用いられているのです。
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