真・MFC千夜一夜物語 第486話 マスフローに関するご質問にお答えしましょう その4

2025年08月26日

本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
本章は今までに講習会やブログ等で皆様から頂いた質問に答える形で進めていきましょう。

コリオリ式流量計は地球の自転を使って測定しているのか?

ここ数年でコリオリ式流量計の認知度は上がってきたのですが、(このブログも少しはそれに貢献しているかな?)それでもその原理・特性に関してはよく知らないという人は未だに多いようです。
MFC講習会で「コリオリ式流量計は地球の自転の力を利用して測定する流量計なのですか?」という質問が飛び出すのは、実は一度や二度ではありません。
このとんでもない誤解を生んだ背景にはだいたいの推測がついてます。
コリオリ式流量計の説明をする際にまず「コリオリ力」の解説をするのですが、その際にたとえ話として「北半球の極から赤道方向に向けて経線方向に大砲を撃つと、放たれた砲弾は、射手から見て右に曲がって着弾します。これは地球のコリオリ力のなせる業なのです。」という話をする事があります。

地球というのは喩えで、要は回転系で中心から玉を円周方向へ転がした際に、狙った方向と実際の動きに生じる差の原因がコリオリ力だという説明なのです。
他の諸要素を無視した場合、本来直進するはずの砲弾を曲げる見かけ上の力がコリオリ力です。コリオリ力は、その砲弾の重さと速度、そして地球の自転角速度により計算されます。
このたとえ話が曲解され「コリオリ式流量計は地球の自転を測定原理とした流量計である。」というとんでもない解説や「故にコリオリ式流量計は、コリオリ力が発生しないの極点では使用できない。」という誤解が生じ、まことしやかに人から人へと伝わったのだと、Decoは推測しています。

地球の自転、つまり回転系に発生するコリオリ力の解説を、コリオリ式流量計のセンサーチューブの世界に当てはめる場合、回転系を振動系に、センサーチューブに流れる流体を砲弾(玉)と考えてください。
この振動系で流体はその質量と速度=質量流量に応じたコリオリ力を発生させるのです。
そうすれば地球の自転は、この世界ではコリオリセンサーチューブの振動の事であり、コリオリ流量計の利用するのは"地球の自転により生じるコリオリ力"そのものではない事がわかります。
前述の大砲の話にしても、実際にコリオリ力を加味して弾道計算しなくてはいけないのは2000mを超える射程の場合です。
コリオリ式流量計で現在世の中にある最小センサー管長さ50cmで、しかも複雑に曲げ加工が施されている為に実際の距離は数cmしかないような世界では、例え地球の自転が影響していたとしても無視して良いのです。

コリオリ力は1835年フランスの物理学者ガスパール=ギュスターヴ・コリオリ(Gaspard-Gustave Coriolis)が発見した回転座標系における慣性力の一種です。
彼はその功績をたたえられて、エッフェル塔の一階バルコニー下にフランスの偉大な科学者72人の1人として名を刻まれているそうです。
この回転系に発生する慣性力としてのコリオリ力を流量検出原理としたのがコリオリ式流量計の流量センサーです。

センサーでは、配管系を回転させる代わりに振動を与えています・振動と回転は異なる運動系に見えますが、図のように回転軸に対し垂直方向からフォーカスすると、実は同じ動きをしている運動系であることが理解できます。
コリオリ式流量センサーは、回転系に発生する慣性力であるコリオリ力を取り出す目的で作られた仮想回転系と考えてもよいでしょう

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