真・MFC千夜一夜物語 第485話 マスフローに関するご質問にお答えしましょう その3

2025年08月19日

今年の夏は8/17まで夏季休暇を頂き、諏訪湖湖上花火大会に行ってきました。
バスツアーで用意された席が、湖の埠頭の先端のすごくいい席で、見上げた視界いっぱいに花火が広がり、音圧で体が揺れるくらいの大迫力で、大満足で花火を堪能させてもらいました。
大会関係者、添乗員、運転手の方々に大感謝です。

さて、夏の宴の余韻に浸りたいところですが、仕事に戻りましょう。
本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
今までに講習会やブログ等で皆様から頂いた質問に答える形で進めていきましょう。

MFCをつけたのにガスが流れないのはなぜ?

これはMFC納入後にある確率で遭遇する質問です。
「MFCを付け替えたらガスが流れない!」
「MFCで初期設定した流量が流れなくなってきた!」
というクレームの内の何割かは、MFCがどうやって流量を制御しているかを御存知ではないからだと言えます。

一例を挙げますと、ユーザーから「MFCが設定信号(S.V.)>流量信号(P.V.)となり、設定した流量を流さない」というクレームがありました。
上流の調圧器の圧力を少し上げてもらったら無事S.V.=P.V.となったそうです。
しかし、ユーザーにはMFCが故障しているのではないか?との疑いが残ったようなので、後日訪問してラインを見せてもらったところ、図にあるように、MFCの下流にニードルバルブがあるのを確認しました。

不具合発生時の圧力まで供給圧を下げてもらいS.V.>P.V.状態の再現を確認してから、ニードルバルブの開度を開けていくと、S.V.=P.V.となって状態は回復したのです。
狐につままれたような顔をしているユーザーに、「このニードルバルブは何であるんですか?」と聞いたところ、MFCを導入する前からあり、おそらく以前は手動で流量制御を行っていた名残かもしれないとのこと。
ラインをMFCでの自動流量制御に切り替えた際に、MFCに何かあった時の為に残してあったらしいのです。
トラブルが起きる直前に誰かがニードルバルブを触って、抵抗が増える閉方向へ回転させてしまったことで、「MFCの必要差圧」>「MFCの一次圧」-「MFCの二次圧」となってしまったのですね。

本来、この位置にどうしてもニードルバルブを置きたい場合は、全開待機で流路抵抗を下げるべきなのですが、Decoが見たときはほぼ全閉に近い状態でした。
これではMFCはガスを供給できません。
MFCはポンプやコンプレッサーとは異なります。
設置さえすれば流量を作り出す便利なツールと誤解する向きが多いのですが、MFCの流量制御バルブは、圧力損失を可変させることで流量を増減させているので、「MFCの一次圧」-「MFCの二次圧」>「MFC自体の圧力損失」でなければ所定の流量を流すことはできないのです。
ニードルバルブと同じで、自動か?手動か?の差があるだけです。
電気回路で言えばMFCの役割は可変抵抗なのですね。

最後にどうしてもMFCで自動制御しながらも、今回のユーザーさんのように、もしもの時の為にニードルバルブを残したい場合は、どうすべきでしょうか?
これは下図のように、ラインを並列化していただく方がよいかと思いますので、ご検討下さい。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan & Safe TechnoloGy