真・MFC千夜一夜物語 第475話 MFCを取り巻くデジタル通信環境 その6
本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
第470話からデジタル通信の現状に関して解説をしています。
マスフローでのフィールドバス&産業用イーサーネットへの取り組みに関して、最後にお話ししましょう。
現時点で最も多種多様なネットワークに対応するオプション展開を行っているのは、このブログでも再三ご紹介ているオランダのブロンコスト・ハイテック(Bronkhorst High-Tech.B.V. 以下、ブロンコスト)です。
まずフィールドバスでシリアルRS232/485ベースのPROFIBUS 、ModbusRTU、そしてブロンコストオリジナルのFLOW-BUS、CAN 2.0のDeviceNet 、CANopen、産業用イーサーネットではEtherCAT 、PROFINET、EtheNet/IP、ModbusTCP、POWERLINKに対応しています。
実に8割以上のシェアを持つネットワークへの対応ができている優等生なのです。
ワールドワイドで様々な産業分野に顧客を持つブロンコストは対応すべきネットワークが多種になる事は避けられないのです。
MFCのデジタル制御部とネットワーク通信部を別モジュール化する事で、ベースになるMFCの制御系はコモンアーキテクチャーとして共通化し、個々の産業用ネットワーク向けの通信モジュールを顧客需要に応じて開発していくという合理的な設計思想が功を奏していますね。
マスフローの最大の市場である半導体製造装置向けのマスフローにフォーカスして追いかけてみると、ここは前述のDeviceNetが未だに席巻しているイメージです。
半導体製造装置業界での産業用イーサーネット対応は次世代装置からで、この分野ではEtherCATが有力です。
ただ、本来のEtherCATの通信速度と画期的な技術は、ロボット等の高度な制御に必要であり、MFCのような流量信号と設定信号のやり取りを行えば、自律的に流量制御を行う機器にとって、果たしてその性能は有義なのかは、悩ましい所です。
一歩踏み込んで、MFCの流量制御にまで装置側が介入していくようなシステムのネットワークとしてはDecoも大賛成なのですが、今まで通りのMFCの使い方ならば、従来通りのフィールドバスで充分なのです。
その為、ガスボックスはフィールドバスのまま、産業用イーサーネットとのハイローミクス的な混在も検討すべきではないかとDecoは考えています。

フィールドバスを産業用イーサーネットが数で上回り、まさに産業用ネットワークの群雄割拠時代と化している現状ではMFCメーカーにとっても、リソースの関係で、全てのMFCメーカーが全てのネットワークに対応できるわけではありません。
ブロンコストのようなメーカーの方がむしろ例外なのです。
第470話からMFCのネットワーク対応に関しての解説を行いました。
産業用ネットワーク市場シェアは、今や産業用イーサーネットに軍配が上がっている状況ですが、これは産業界によっては様相が異なりますし、マスフローはどちらかというと後進的な業界に入ります。
そして、ハイスピードネットワーク対応に関する議論も必要です。
「通信速度は速いに越したことはない」かもしれませんが、コロナ禍での部品調達に狂奔した記憶からは、MFCの通信用途として考える場合、通信速度では勝るが、他の要素で既存のロースピードネットワークを凌げるか?という疑問も残ります。
当然EtherCATのような産業用イーサーネット規格を産業界は後押しするでしょうし、それによるコストダウン、基板の小型化が実現していく筈です。
逆に少数派になっていくフィールドバスには、10年先の供給保証がどうなるのか?といった不安は付きまとう事になります。
故にハイローミクスといいながら、あえて選んだロー側に足を引っ張られるような事態も十分に考えられます。
決して潤沢にあるとは言えないリソースでありながら、MFCメーカーはコンポーネントメーカーの哀しさから、このネットワーク対応にいつも後追いの形でしかアプローチ出来ずにきました。
進むべき道をどう見出していくのか?これは実はネットワーク対応がMFCの流量制御という基本性能向上に大きく関与していないだけに、更に難しい選択っているのです。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan & Safe TechnoloGy