真・MFC千夜一夜物語 第456話 コンバージョンファクターという曲者 その6

2024年11月26日

マスフローコントローラー(以下MFC)やマスフローメーター(以下MFM)でよく使われる言葉に、コンバージョンファクター(以下CF)という言葉がありますね。

熱式流量センサー以外にCFは存在するのか?

では他の流量測定方式でCFは存在するのでしょうか?
まずこの章の最初に説明した通り、熱式流量計と同じく質量流量計に分類されるコリオリ式にはCFは存在しません。

これは上図右のコリオリ式の流量式を見れば一目瞭然です。
流量式に熱式でいう比熱のような流体種に依存する項目が無いのです。
コリオリ式は流体の物性が不明でも、混合比率が刻々と変化しても流体の質量流力を測定できる完全な質量流量計と言えるのです。
同じ質量流量計でも流体固有の物性に左右される熱式とは、大きく異なるのです。
故にCFは存在しないと言いきれます。
ただ、環境条件でチューブのバネ定数は温度変化に影響を受けるので、そういった意味で補正は必要です。
でも、それはコリオリ式流量計内部で温度補償として完結しているので、CFとして捉える必要はありません。
熱式の場合、温度、圧力が流体の比熱に影響を及ぼすから、CFとして管理する必要があるのですから。

次に昨今増えている圧力式MFCはどうでしようか?
そもそも圧力センサーを用いて、流量を求めるという方式は、実はかなり古くから存在していて、差圧式流量計と分類されています。
差圧式流量計の代表的な原理は、絞り式とピトー管式、そして層流式に分類されます。
その中で取り上げられることが多い層流式にフォーカスしてみましょう。
流量式を図で示します。

層流式流量計は、層流素子である細管を流れる層流状態の流体流量を細管の上下流の圧力差から算出する方式で、検出原理には、ハーゲン・ポアズイユ流れの定理が用いられています。
「配管内が層流であるという条件下で、配管抵抗と流体の粘性により配管流路の両端に発生する差圧P1-P2は、流体の体積流量に比例する」というのが層流式流量計の基本原理です。
ハーゲン・ポアズイユの定理に従って記載すると、「体積流量は、配管半径の4乗に比例し、配管入口圧-出口圧=差圧に比例し、配管長さに反比例し、流体の粘性に反比例する」となります。
ハーゲン・ポアズイユの流れとは、まさに層流状態の流れを示すので、層流式流量計と称されるのです。

CFの有無に関する結論は、既にこの検出原理の解説に記されていました。
熱式が流体の比熱に影響を受けるのに対して、層流式は流体の粘性の影響を受けるのです。
つまり層流式にもCFは存在しているのです。
そして気体の粘性を特定するには、流量センサーを通過する温度、圧力条件下での流体の密度を把握しなくてはいけません。
コリオリ式センサーを使えば密度はリアルタイムで把握できるますが、それではコリオリ式で流量を測ればいい事になってしまいますよね?
その為、半導体製造用等の特殊なガスの場合、熱式と同様のPVTt法などでCFを求めていく事が必要となるのでした。

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