真・MFC千夜一夜物語 第454話 コンバージョンファクターという曲者 その4

2024年11月12日

マスフローコントローラー(以下MFC)やマスフローメーター(以下MFM)でよく使われる言葉に、コンバージョンファクター(以下CF)という言葉がありますね。

実ガス法に対してCFを用いて、標準とするガスに対して各種流体に応じた流量換算補正を行うことで運用するのがコンバージョンファクター法です。
CF法では、標準ガスを窒素にする事が多いです。
これは比較的調達が簡単で、機器や人体に無害であること選ばれていると推察します。
窒素CF=1.0というセンター値にした場合の、各ガスの流量比を係数化すると、だいたい1.4から0.1以下までの範囲で分布する形となります。
CFが1.0より大きなガスの代表例はヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)のような単原子ガスです。
そして、窒素に近いのは空気、酸素(O2)、水素(H2)、フッ素(F2)。
逆に小さいものは、二酸化炭素(CO2)、六フッ化硫黄(SF6)、四塩化ケイ素(SiCl4)等が挙げられます。
CFが小さい流体の特長は、全体的に窒素より分子量が大きく、中には沸点が常温以下で、ボンベから負圧供給される六フッ化タングステン(WF6)のようなものもあります。

マスフローの実務をやっていると、よく「窒素用のマスフローに別のガスを流したら流量はどうなるの?」といった類の、流体の違いによる流量読み替えに関する質問を貰う事があります。
例えば窒素用マスフローにHeを流したとしたら、実際流れる流量は窒素より多く流れます。
その流量は、マスフローからの表示流量×(HeのCF÷N2のCF)で求められます。
これを導き出すためにはHeのCFを確認する必要があるのですが、ここで問題になるのが「CFは、全てのマスフローに対して共通規格化された係数ではない」ということなのです

熱式流量計の式のC:補正係数が関わる要素であり、マスフローメーカー間でだけ異なるだけではなく、同じメーカーでも型式により異なる場合もあります。
採用している熱式センサーの方式の違いや、層流素子の有無、更に層流素子が存在する場合は流量の大小による層流素子の構造差、圧力条件による分流比の変化等々・・・種々の理由が存在しており、業界共通で「1ガスに1CF」を統一採用するのは難しい状況です。
図では一例として、同じガスAを使用する同じメーカー品の場合の、窒素vs実ガスの極端な例を示しました。(あくまで説明のための図であり、特定のメーカー、ガス種に適用される事例ではありません。)

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan