真・MFC千夜一夜物語 第453話 コンバージョンファクターという曲者 その3
マスフローコントローラー(MFC)やマスフローメーター(MFM)でよく使われる言葉に、コンバージョンファクター(CF)という言葉があります。
前回、熱式流量計の場合、CFとは流体各々の熱を運ぶ能力の比を表した係数であるという解説をさせて頂きました。
このCFはメーカーが熱式MFCやMFMを製造する際に、顧客の使用する各種流体に対応する校正ガスでの値付けを行う場面で用いられています。
図でその大別を示します。
一番シンプルにして、確実な方法は測定対象となるガス=実ガスでMFCやMFMへの値付けを行う実ガス法です。
理想的に思える実ガス法ですが、問題があります。
まずは実際に製品やその製造設備に流すことが憚られるような流体が存在することです。
これは腐食性や自然発火性、毒性を有すガスを流すことのリスクですね。
マスフローのメイン需要先である半導体プロセスでは、塩素(Cl2)、モノシラン(SiH4)、ホスフィン(PH3)等に代表される危険な流体が使用される割合が非常に高い為、なおさらです。
そして次には多種多様な実ガスの供給設備とそれらと対になる除害処理設備を整える事への設備投資の負担です。
余談ですが、実ガス法が行われている例として、体積流量計の一つ面積式流量計にガラスのテーパー管に玉(=フロート)が浮くフロート式流量計というものがあります。
電源も要らず、配管に取り付ければ、ガスの流れに応じてフロートが指し示す目盛りを読み取れる簡易さが重宝されています。
その測定の仕組みは図を参下さい。
英語名は Variable Area Flowmeter で、この和約"可変面積式流量計"の方が、その流量測定原理がわかりやすいかと思います。
下から上に向かって広がった透明なテーパー管の中にフロートがあり、このフロートは流れに押されて上方に動きます。
フロートが上昇するにつれて、テーパー管の内壁とフロートの間のギャップが拡大するので、流体が抜け出る量が増え、その分フロートを押し上げる力が弱くなり、最後にフロートはその押上げ力と重さがバランスした位置で止まります。
この位置が流量を表すのです。
簡便さや電源が不要な事から今でも重宝されている流量計です。
逆にその簡単な構造から流量精度に関しては軽視されがちなフロート式流量計ですが、一部の安価なグレードを除き実ガス校正が行われており、フロートが示す位置に目盛りを刻みつける製造手法を取っています。
そういったフロート式流量計は、製品ロットにより最大目盛側と最少目盛側の目盛位置に差が生じることもあります。
これは製造時の器差でずれて刻印されているのではなく、器差を踏まえてちゃんと実ガスで目盛を切っている証なのです。
そしてこのブログでも何度か解説していますが、体積流量計は「温度・圧力補正」を適切に行いさえすれば、正確なガス測定ができる事がわかっています。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan