真・MFC千夜一夜物語 第448話 質量流量計のトラブルシューティング その5
マスフローコントローラー(以下MFC)を含む質量流量計の基礎に立ち戻って、その原理から生じるトラブルシューティングに関して解説していきましょう
Decoの経験上、熱式流量センサーを搭載したMFCで一番多いトラブルはゼロのずれ=ゼロドリフトです。
継続的にゼロがズレる現象が生じた場合、制御流量に対する影響はそのズレ分がそのまま乗りますので困ったものなのです。
対処方法としては、古いアナログMFCの場合はゼロ調整用のボリュームをドライバーで調整するという者でした。
現行のデジタルMFCではゼロリセットスイッチや通信によるゼロリセットコマンド入力で都度ゼロバランスを再調整する方法があって便利になっています。
でも、センサー巻線の抵抗は継続的に劣化している場合、つまりマスフローの寿命が近い場合、「ゼロ調整しても、しばらく時間が経過するとまたずれる」といった困った状況が起きます。
こういった現象が確認された場合、応急処置は都度ゼロ再調整で構わないのですが、早期にメーカーに修理に出すことをお薦めします。
そうすれば流量センサーは新品に交換され、リフレッシュされて戻ってきてくれます。
機械に永遠の寿命はありません。
不安要素を抱えたまま運用するより、早期のメンテナンスこそが、大きなトラブルを回避する一番の策なのです。
巻線の抵抗値バランスが経時変化で崩れる事に対する対応は、MEMS型流量センサーという形で提示されました。だが、MEMS型は直接流体に接触する事がネックになり、腐食性ガスなどへの対応が難しく、ガスを選びました。
しかし、ここにきてブロンコストから新しいセンサーが提示されたのです。
FLEXI-FLOW Compactに採用されたTCS(Trough Chip Sensor)Technologyバイパスフローセンサーという技術です。
従来の巻線型とMEMS型を融合して、巻線型センサーの器差の原因であったニクロム線を細管の外周に巻きつけた流量センサーから脱却しつつ、従来培ってきた分流(バイパス)構造でのノウハウを活かし、広いレンジで高い精度、繰り返し性を維持できるのがTCS Technology バイパスフローセンサーです。
詳しくは以下の動画'38秒くらいからをご覧ください。
基本的に、このセンサーは2つの真っ直ぐな窒化ケイ素キャピラリーで構成され、それぞれの直径は100μm、壁の厚さは1μmです。
部の温度依存の金属抵抗器は、ヒーターおよび温度センサーとして機能しています。
流路にただMEMSセンサーを置くのではなく、今まで培ってきた巻線型センサーのセンサー部をまさにMEMSで再現する事で、今まで培ってきた分流(バイパス)技術を利用した多彩な流量・圧力レンジへの拡張性を待たせた温故知新のセンサー技術なのです。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan