真・MFC千夜一夜物語 第446話 質量流量計のトラブルシューティング その3

2024年09月10日

マスフローコントローラー(以下MFC)を含む質量流量計の基礎に立ち戻って、その原理から生じるトラブルシューティングに関して解説していきます。

改めて質量流量計の基礎を解説しましょう。
質量流量計に分類される熱式とコリオリ式の流量式をお馴染みの図で解説しますね。

まず熱式流量計の流量式は Cp=流体の比熱(気体の場合、定圧比熱)を式に用いている事から温度・圧力への依存は一目瞭然です。
例えば窒素の定圧比熱は1気圧=1013hPa(A)条件の場合、0℃で1043J/kg℃であり、50℃でも同値であるが、水素 は0℃:14193J/kg℃→50℃:14403 J/kg℃、アンモニアは0℃:2144J/kg℃→50℃:2181 J/kg℃、メタンが0℃:2181J/kg℃→50℃:2303 J/kg℃等、大きなもので5%を超えるガスもあります。
こういった温度、圧力で比熱の変動幅が大きなガス種に対しては、熱式流量計は条件に応じたコンバージョンファクター(CF)を補正値として採用していて、温度、圧力仕様に応じて一つのガス種でも複数の補正値=マルチCFをメモリーしている事が当たり前になっています。
つまり熱式流量計は、温度、圧力(=密度)に大きな影響を受ける質量流量計だという事になるのです。

質量流量計という言葉から受ける印象とは異なるものなのですね。
これと比べればコリオリ式流量計は、その流量式に一切流体に依存する項目がない点で、流体を問わず測定が可能な流量計だとわかります。
熱式では対応できないであろう流体、例えば物性不明の流体、混合比率、組成が刻々と変化するような流体でも質量流量で正確な流量測定ができるのです。
まさに秤の如しですね。
故にDecoはコリオリ式こそが完全な質量流量計とお話してます。

では、そのコリオリ式流量計に対していかなる温度・圧力の補正は不要かと言われればそうではないのです。
周囲温度に影響を受ける項目として、流量式の中にKs=チューブのバネ定数があるからです。つまりコリオリ式は温度センサーを搭載して温度補正をKsに対して行う必要があるということなのです。
このように質量流量計というものを正確に理解しておくことは重要です。
質量流量は温度圧力の影響受けないが、質量流量計というハードウエア自体はそうではないという事を頭に入れておかないと、質量流量計を使っても正しく計測・測定できないといった事態に見舞われることになるのです。

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