真・MFC千夜一夜物語 第435話 MFCの歴史を振り返ろう その11

2024年06月11日

マスフローコントローラー(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。

前回解説したソレノイドアクチュエーターに対して日本のMFCメーカーが多く採用しているのが、MFCの流量制御バルブで第三の方式となるピエゾアクチュエーターです。
ピエゾとは圧電素子の一種で、ある結晶構造体に機械的圧力を加え変位させると、この圧力の大きさに比例して電圧を発生する原理(=正圧電効果)を応用しています。
実際には、この逆で「ある電圧をかけることでで、結晶構造体が変位する(伸びる)」(=逆圧電効果)を利用しているのですが・・・
変位量はナノメータレベルの微小な単位です。
これでは素子単体ではバルブは、ほんの少ししか動かせないで、図にあるように複数を積層スタックすることで使用されています。

それでも機器に内蔵できるサイズのスタックでは、マイクロメーターオーダーしかストロークは稼げないのです。
その為、決してストロークが必要な大きな流量用途で使用できるわけではないのですが、その応答性能と何よりも発生力の大きさを評価され、半導体製造装置用で多く使われています。   

MFCの流量制御バルブに用いられるアクチュエーターに関して「ピエゾはソレノイドより高速流量制御ができて優れている」という見解を持つ方にお会いすることがあります。
このブログではもう何度も解説していますが、アクチュエーター単体の応答性の差はMFCの応答性の決定的な差にはなりません。
確かに「部品としての応答性能」では、ピエゾの方がソレノイドよりも応答は速いです。
しかし、MFCが"本体内に「検出器」としての流量センサーと、流量を調節する「自動弁」、そしてセンサー信号を受け目標値との偏差を判断し自動弁を操作する「調整計」までをワンパッケージにした製品"である以上、"MFCとしての応答性能"はアクチュエーター単体性能の優劣だけでは決まらないのでしたね?

MFCはPVとSVを比較してバルブの操作量を決めるMVを出力します。
決してバルブ単体を指示通りの位置に制御する事を目的とした機器ではありません。
MFCの応答性能のネックは、その制御の起点になる熱式センサーの速さ=流量信号出力の速さです。
流体により奪われた熱の移動を計るMFCのセンサーの応答性は原理から考えても、ソレノイド、ピエゾ両アクチュエーターの応答性よりは遙かに遅いのが現実なのです。
MFCはSVが明確に存在するが故に、流量制御を行う場合に限り、実際のセンサーの応答性よりも早い制御性能を実現しているデバイスなのです。
故にアクチュエーターの応答性の優劣だけを議論する事は、高速応答に直接つながらないというのがDecoの持論です。
ソレノイドにはピエゾにない大きなストロークから大流量に対応出来るという優れた特性があり、そこを評価されて今なお世界中で多くのMFCに採用されている事実がそれを証明しています。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan