MFCとは不思議な機器だと思いませんか?
Decoのマスフロー徒然日記です。
これでもう30年近くこのマスフローコントローラー(MFC)という機器と付き合っているのですが、MFCって不思議な機器だと思うことがあります。
「MFCって流量計ですか?」という質問に対して、「違いますね。」とお答えします。
「MFCって要はバルブだよな?」という投げかけに対しても「違いますね。」とお答えしてます。
後者はDecoの亡くなった親父からの投げかけでした。
実はDecoの父は、船で使われていた大型のバルブの設計者だったんです。
身の丈くらいのサイズの大きなバルブと写真に納まった若き日の親父を見て育ちました。
なので、親父は「なんやかんやいっても、こいつも俺と同じ仕事で飯を食ってるんだ」という思いで、先の言葉を投げてきたんですが、それに理屈で返してしまう優しくない息子でした。
MFCとは流量センサーと流量制御バルブと調整計(PIDコントローラー)を一体にした機器です。
計装の世界ではこういったオールインワンスタイルで流体制御を行うものは実は稀です。
MFCという存在の方が異端児なんです。
本来流量計とニードルバルブを作業者が目視で流量を読み、手動でニードルバルブを調整していた手動流量制御がこれになります。
それを自動化したのが、下の図です。
流量出力が出る流量計に調整計と自動制御弁を組み合わせたスタイルが基本なんですね。
では、MFCがこの3つを一つの器に統合した理由は何でしょう?
それは"大きさ"なんです。
「フットプリントを小さくしたい。」という要求にこたえたわけですが、それはMFCの主戦場である半導体製造装置では非常に重要な要素だったのです。
半導体の製造には危険なガス種が多く、しかもそんなガスを多系統搭載する装置が必要になります。(例えばエッチャーだと1チャンバーに16系統のMFCを接続して、それを4-6チャンバー搭載します。)できるだけリークポイントを少なくするためには一体化が有利です。
そしてそれらをガスボックスに収納して除害システムへ集中排気するレイアウトを取りたいのです。
半導体製造装置で必要な流量レンジが比較的小さいということが幸いし、この統合はうまくいきました。
しかし、この統合を行った故にMFCは非常に独特な機器として、制御屋さんの頭を悩ませる機器になってしまったとも言えるのです。
「あちらを立てれば、こちらが立たず。」なんですねぇ・・・
マスフロー徒然日記 by EZ-Japan Deco