真・MFC千夜一夜物語 第419話 MFCの応答性能 その1

2023年12月12日

章を改めて巻線型熱式流量センサーを搭載したマスフローメーター(MFM)の応答がマスフローコントローラー(MFC)のそれよりも決して速くはならない理由のお話です。

まずは熱の移動を流量検出原理とする熱式流量計とはどういったものだったか?おさらいしましょう。巻線型であろうとMEMS型であろうと、熱式流量計の流量式は以下になっていましたね?

簡単に言えば、流れ込んできた流体が奪う熱量は、その流量と比例関係にあるといものでした。
その点では巻線型もMEMSも差はありません。
というか、そもそも巻線型熱式流量計をMEMS技術で置き換えたのがMEMS型と言えるので、これは当たり前のことです。

ところが、この両者に決定的な構造の差があります。
上図にありますように巻線型がセンサーチューブの外周に細径のニクロム線を巻く事で、ヒーター及び測温抵抗体として使用しているのに対して、MEMSは接ガス面にシリコンのダイヤフラムを形成して、そこにヒーターと測温抵抗体を形成しています。
つまり、測定対象の流体に対して巻線型は非接触なのに対して、MEMS型は接触しているのです。

これはセンサーの感度にとって大きな差となります。
よく講習会では、「お湯の熱さを計る際に素手の場合と、厚手のゴム手袋をした場合の違い」という説明をして納得いただいています。
この例えでわかるように、たとえ0.35mm径のSUSチューブであったとしても、流体が非接触な状態で熱の移動を測るという事は、感度的には非常に不利になります。

このようにまず同じ熱式でも、非接触タイプの巻線型と接触タイプのMEMS型ではセンサーの感度に対しては大きな差が生じるのでした。

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