真・MFC千夜一夜物語 第418話 マスフローに関する誤解 その9
Decoが見聞してきた中で、マスフローメーター(MFM)、マスフローコントローラー(MFC)の使用方法に関して、一般的に大きな誤解があるなぁと思ったものを取り上げてお話ししていきたいと思います。
最後のお話はMFCとMFMの応答性に関してです。
「MFCとMFMでは当然MFMの応答が速いですよね?」という質問を貰う事があります。
これに関してDecoはNoと答えさせて頂いてます。
この時、質問者からは必ずこういったリアクションをもらいます。
「ちょっと待って下さい。どう考えても流量制御をしない分、MFMの反応が速くなくてはおかしいじゃないですか?」
「Decoさんが説明に使うMFMとMFCの動作チャート(下図)でもそう受け取れる説明をされてますよ!」と、問い詰められたこともあります。
MFMは流量センサーでの熱の移動を流量へ換算して、流量出力(P.V.)として出力しているだけなのに対して、MFCでは設定信号(S.V.)とP.V.を比較して、流量制御バルブの開度を調整する操作量(M.V.)を決定して、流量制御を行うという動作が付け加わるのですから、どう考えてもP.V.を出力した段階でMFMの応答性の方が早い筈ではないのか?となりますね。
しかしながら熱式、しかも巻線型分流方式に限った場合、実は必ずしもそうではないのです。
それは熱式流量センサー自体が、熱の移動を捉えて流量信号に変換するという特性に関わっています。熱の移動という現象は、そもそも早くはならないからなのです。
ヤカンを火にかけてお湯を沸かすのには時間がかかりますよね?
これは火に掛けたヤカンの金属材料と水の熱伝導率と熱容量に起因しています。
MEMS型のように直接流体に接触するタイプの熱式センサーはまだよいのですが、巻線型のようにSUSチューブの外周にニクロム線を巻いて発熱させている場合、流体はあくまでSUSチューブを介して熱を受け取っている事になります。
もそも熱の伝導が遅いのに、更に間接的に熱の受け渡しをやっていては、これは更に遅くなっても当たりまえです。
実際流量センサーの生の応答は、数秒かかってしまいます。
「うむ?流量センサーの信号=MFMの応答信号が数秒かかるのに、なぜ今のMFCは1秒以下の高速応答を謳えているの?」と思いませんでしたか?
実はここがMFC最大の謎なのです。
このお話は長くなるので、章を改めてご説明したいと思います。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan