真・MFC千夜一夜物語 第410話 マスフローに関する誤解 その1

2023年09月19日

今回からDecoが見聞してきた中で、マスフローメーター(MFM)マスフローコントローラー(MFC)の使用方法に関して、一般的に大きな誤解があるなぁと思ったものを取り上げてお話ししていきたいと思います。

確かに熱式MFMは質量流量計として、ある温度・圧力条件で、流体種を特定できていれば他の体積流量計のような温圧補正を必要とせず正確な流量測定が可能です。
また、MFCは、ワンパッケージで質量流量測定に加え、それを元にした流量の自動制御が行えるという利点を高く評価され、半導体製造装置の成膜やエッチング、分析、燃焼等の幅広い分野で用いられて研究用途から工場の量産ラインにまで普及しています。
でも、Decoの経験上、マスフロー、特に熱式流量センサーを搭載したマスフローの用法に関しては、首をかしげるものがあることも確かなのです。
今回の解説が、そういった誤った認識を改めて頂き、正しくマスフローを使って頂ける一助になればよいなと思っています。

1. マスフローを積算流量計として使いたい

「熱式マスフローで積算流量を測定しているのだが、得られたデータと実際の消費量が合致しない。」こういった問い合わせを貰う事があります。
なぜでしょうか?
答えは簡単で熱式流量計は瞬時流量計であって、積算流量計ではないからです。
流量計とは流量を測定する目的で使用されます。
そもそも流量自体は物理標準ではないので、流れを支配する一つ、または複数のパラメータを計って、そこから流量値へ変換するのが「流量計」なのです。
ですから流量計は用途に応じて複数の種類があります。

使用する流体に適応でき、適切な流量域をカバーできる流量計を選択することが、正しい流量測定の第一歩です。
そしてこれらの流量計の中には、積算流量を測る積算流量計と瞬時流量を測る瞬時流量計があります。積算流量と瞬時流量の観念に関しは下図を見てください。

ある単位時間内に流れた量の総和=積算流量です。
故に単位は体積流量ならmLやL、質量流量ならgやkgを用います。
水道料金やガソリン代は、この積算流量値に基づいて課金徴収されているので、皆さんも馴染みがある流量計だと思います。
積算流量を測定する流量計として、容積式、渦式、タービン式があり、流量信号がパルス出力になっています。

それに対して、一般的に流量と呼称する場合はある瞬間に流れる量=瞬時流量 の事を指します。流量監視・警報用途や流量制御に用いられており、マスフローの熱式流量センサーはこちらに分類されます。
単位はmL/min、kg/hのように単位時間との複合単位になっています。

故に前述のような問い合わせには「流量誤差を議論する前に、マスフローは積算流量計ではないので、積算流量を測ることはできませんよ。」と、Decoは回答をすることにしているのです。
しかし、この回答だけでは納得がいかない方もおられます。
「マスフローでも積算できるってメーカーは言っているじゃないか!」とおっしゃいます。
さて、そんなお客様には、どうご説明していきましょうか?

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan