真・MFC千夜一夜物語 第408話 マスフローとアンモニア その5

2023年08月22日

マスフローメーター(MFM)マスフローコントローラー(MFC)で流量測定や流量制御を行う流体でも最近注目度が高いのは水素とアンモニア(NH3)だと思います。
水素に関しては第176夜と177夜で解説をさせてもらいましたので、今回はアンモニアのお話をさせて頂きます。

今回からはアンモニアを液体で流量制御する事例です。
アンモニアは常温で気体であるという解説を前の解説でいたしまたが、今度は液相で流量制御する方法を考えてみましょう。
常温常圧で気体であるアンモニアですが、圧力を高くすれば液体として搬送が可能になります。蒸気圧曲線から紐解けば、20℃で0.87MPa(A)を超える辺りで液体となる筈ですね?
こういった液体を高い圧力で搬送し、最終段階で気化するのは、気相でのハンドドリングよりも難度は高いと言えます。
だが、それをクリアできる適切なデバイスがあれば、より大流量のアンモニアを搬送する事が可能になるはずです。
それは気体と液体の密度差を考えればわかります。
そして高圧条件で液体流量測定するのが得意な流量計が存在しています。
本ブログで何度も取り上げているので、読者はピンと来ていると思います。

そう、コリオリ式流量計ですね。
ここでコリオリ式流量計のおさらいをしましょう。
コリオリ力は1835年フランスの物理学者ガスパール=ギュスターヴ・コリオリ(Gaspard-Gustave Coriolis)が発見した回転座標系における慣性力の一種である。回転系に発生する慣性力としてのコリオリ力を流量検出原理としたのがコリオリ式流量計です。
このコリオリ式流量計の流量センサーは回転させる代わりに振動を与えています。

振動と回転は異なる運動系に見えますが、実は図のように回転軸に対し垂直方向からフォーカスすると同じ動きであることが理解できます。
コリオリ式流量センサーは、回転系に発生する慣性力であるコリオリ力を取り出す目的で作られた仮想回転系と考えてもよいでしょう。

一般的なコリオリ式流量計の構造は2本のU字型チューブを使用しており、それらを逆位相で振動させています。
流体が流れると質量流量に応じたコリオリ力が作用して、振動する2本のチューブには位相差が発生し、捻れが発生します。
流体が進入する側の左側ではコリオリ力は共に2本のチューブの内側に働き、流体が出る右側は流体の向きが180度変わるため、今度は外側に働くからです。
ここで流体が流れたときの位相差を測ればコリオリ力、ひいては流体の質量流量を算出できるのですが、実際それをリアルタイムで測定するのは難しいので、左右のチューブが振動の中立点(捻れ角=0位置)を基準点としてそこを通過する時間差Δtを位相差として測定することが多いのです。
コリオリ式流量計には、チューブを振動させるオシレーター(発振回路)と、左右の捻れを検出するピックアップ(検出回路)が配置されているのが一般的です。

中にはU字管1本で構成されたものもあります。
1本でも原理上は問題が無いのですが、コリオリ力を強く発生させられない場合、つまり流体の質量が小さい場合、センサーの感度が低くなり、結果SN比が悪い信号となるため、外乱=ノイズに弱い傾向を示すため、2本チューブタイプが開発されたと言われています。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan