真・MFC千夜一夜物語 第407話 マスフローとアンモニア その4

2023年08月07日

マスフローメーター(MFM)マスフローコントローラー(MFC)で流量測定や流量制御を行う流体でも最近注目度が高いのは水素とアンモニア(NH3)だと思います。水素に関しては第176夜と177夜で解説をさせてもらいましたので、今回はアンモニアのお話をさせて頂きます。

前回はインサーションセンサータイプで低圧力損失なブロンコスト(Bronkhorst High-Tech B.V.)MASS-STREAMシリーズをご紹介しましたが、コンベンショナルな巻線型MFCのスタンダード機種であるEL-FLOWシリーズIN-FLOWシリーズでもアンモニア流量測定&制御用の需要は増えています。

出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

低圧力損失で評価されるMASS-STREAMシリーズと比べると、このEL-FLOWシリーズは若干圧損が大きくなるものの、それでも他メーカーのMFCと比較すれば圧力損失を押さえる事が可能ですし、やはりMFCとしての基本性能である流量測定&制御の性能で勝る点が特に研究機関で高く評価されているのです。

インサーションセンサータイプは、確かに分流が無い、もしくは分流比の小さい構造でMFCを作れる利点はあるのですが、インサーションセンサーは直線性に劣る傾向があります。
そもそもは巻線式よりも古くから存在する熱線式風速計をオリジナルとするこのセンサーは直線性が良くない事で、アナログ時代は一度埋没しかけたセンサーでした。
それをデジタル化する事で多点補正を行い実用上は問題が無いレベルに引き上げたのがブロンコストのMASS-STREAMを始めとする現世代のインサーションセンサーモデルだったのです。
下図はあくまでイメージで本当はこのような信号にはなっていませんが、本来破線のような直線性性能であったものを50%/25%というポイントで補正を施して直線性を向上させているのがわかりますね?

このように現世代のデジタル化されたMASS-STREAMシリーズの直線性は、工業用等の実用レベルでは全く問題はありません。
しかし、研究用途などでMFCの設定流量をかなり広い範囲で振る事があり、その各ポイントで高い精度=アンモニア実ガス流量とのトレーサビリティが取れた整合を求める用途では、あえて圧力損失が高くなっても更に上の性能を持つMFCであるEL-FLOWシリーズを選択するというユーザーも存在しています。

これは同じアンモニア流量制御でもユーザーの置かれたポジションによって、MFCに強く求めるものが何か?により、左右されると言っていいでしょうね。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan