真・MFC千夜一夜物語 第406話 マスフローとアンモニア その3

2023年07月31日

マスフローメーター(MFM)マスフローコントローラー(MFC)で流量測定や流量制御を行う流体でも最近注目度が高いのは水素とアンモニア(NH3)だと思います。
水素に関しては第176夜と177夜で解説をさせてもらいましたので、今回からアンモニアのお話をさせて頂きます。

液化ガスであるアンモニアの供給圧を上げたければ、温度を上げて蒸気圧を稼ぐしか術はありません。でも、高圧ガス保安法では可燃性ガスのボンベを火や電気で直接温める行為が禁じられていて、間接的な手法である湯煎しか方法はないのです。
でも、湯煎は設備も大掛かりになり大変です。
故にできるだけ低い圧力で大量のアンモニアを供給したいのが本音ですね?

MASS-STREAM D-6471-004BI 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

ブロンコスト(Bronkhorst High-Tech B.V.)のMFC MASS-STREAM D-6471は、先ほどの二次圧0.2MPaの条件に対して、なんと一次圧は0.2386MPaで500L/min[N]のアンモニア流量制御ができる低圧損大流量MFCです。
圧力損失はわずか38.6kPa。
まさにアンモニアのような液化ガスを大流量制御するためにあるようなMFCですね。
なぜこのMFCはこんなに低圧損で大流量制御が可能なのか?その理由の一つに挙げられるのが、流量センサー構造です。

以前の記事でも取り上げたので記憶している読者も多いかもしれませんが、MASS-STREAMシリーズの流量センサーは、インサーションタイプです。
従来のマスフローの多くは巻線型分流構造をとっています。

この方式では流れる流体の一部(数mL/min程度)を0.3~0.8mmφ程度のセンサー管側に流して熱移動を測定し、残りほとんどを層流素子(バイパス)に流しています。
その為、センサーと層流素子の分岐部分に抵抗=圧力損失を設けてやってセンサー管へ流体が流れる構造にしなくてはいけません。
また層流素子自体の抵抗もセンサー管と同径の細管の集合体であったり、エッチングで凸凹を付けた板を丸めたものであったり、焼結フィルターを使っているものもある為、流量が大きくなるにつれこの構造部のボリュームも大きくなり、圧力損失が大きくなるのはやむを得ませんでした。
ところがMASS-STREAMのセンサーは直接流体を測定するインサーションタイプです。
整流の為のフィルターは入ってはいますが、比較すれば圧倒的に少ない抵抗で流体を流すことができます。
もちろんどんな大流量までも分流構造無しで測定できるわけではありません。
ある程度の流量になれば、分流構造は必要になってきますが、それでもその分流比は巻線式のそれと比べればはるかに小さいのです。
分流比が小さいという事は、異物の混入等で出荷時よりも分流比が仮に変動したとしても、その影響は小さくなります。

MASS-STREAMがEU圏、特に窒化炉メーカーの多いドイツに於いて、アンモニアの流量測定&制御用途で高く評価され採用されているのは、こういったアンモニア・アプリケーションに好ましい特性を評価されてのことなのです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan