真・MFC千夜一夜物語 第405話 マスフローとアンモニア その2

2023年07月24日

マスフローメーター(MFM)マスフローコントローラー(MFC)で流量測定や流量制御を行う流体でも最近注目度が高いのは水素とアンモニア(NH3)だと思います。
水素に関しては第176夜と177夜で解説をさせてもらいましたので、今回からアンモニアのお話をさせて頂きます。

アンモニアを気体で流量制御する場合

未来有望なアンモニアですが、この流体自体は可燃性を有す有毒ガスなので注意が必要です。
その最大の用途は下のグラフにあるように今のところ農業の肥料用途が圧倒的に多いのです。

出典:日本エネルギー経済研究所及びNEXANT(2012年)
経済産業省資源エネルギー庁HP"アンモニアが"燃料"になる?!(前編)~身近だけど実は知らないアンモニアの利用先"

工業用途も現在では拡大しており、半導体製造装置、窒化炉、発電設備、脱硝装置、石油精製装置の防食、イオンエッチングプロセスなど各種工業用途で広く用いられています。
アンモニアボンベの色は白色と決められていますので、見かける事もあるのではないでしょうか?
アンモニアは20℃での蒸気圧が0.857MPa(A)の液化ガスです。
液化ガスと通常ガスとの大きな差は、液化の字のごとく液化ガスボンベには圧縮した液体と化したアンモニアが封入されていて、それがボンベ内で気化したガスを供給する仕組みであることです。

ボンベに充填された液体アンモニアが内部で気化して気体となった際に得られる圧力は、常温で0.75MPa(G)あればいいところです。
しかも液体アンモニアの蒸発潜熱は1268 KJ/Kg(0℃、1013hPa)も必要である為、アンモニアを大量にボンベから払い出そうとすると、熱を奪われてしまい、急激にボンベ温度が下がり、結果として供給圧力を失ってしまう事になります。

例えばアンモニアをMFC下流側に0.2MPaの背圧が立つ条件で500L/min[N]流量制御したい場合、通常のMFCだと最低でもMFCへの供給圧は0.5MPa程の圧力をとってやる必要があります。
MFCでの圧力損失=ΔPは0.3MPa必要になる計算です。
これはあくまでMFCの入口/出口部での差圧だから、ボンベからチャンバーまでの配管経路にある他の配管部品、バルブやフィルター、そして配管の曲がり等により生じる圧力損失を考慮すると、アンモニアボンベからの供給圧はさらに高く維持しなくてはならなくなってしまうのです。

供給圧を上げるには、液化ガスである限り温度を上げて蒸気圧を稼ぐしか術はありません。
手っ取り早い話、ボンベの温度を上げればいいのだが、高圧ガス保安法では可燃性ガスのボンベを火や電気で直接温める行為が禁じられていますので、間接的な手法である湯煎しか方法はないのです。
このことを知らずにアンモニアボンベを市販の非可燃性ガス専用ボンベーヒーター(マントルヒーターやシリコンラバーヒーター)を用いている現場があるかもしれませんが、法律順守を意識して行動して頂きたいです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan