真・MFC千夜一夜物語 第392話 寒いですね。寒い日のMFCは・・・その4

2023年03月07日

寒い冬場のMFCマスフローコントローラー)やMFM(マスフローメーター)の選定、設置に関する注意事項のお話です。
ここでやっとMFCの周囲にある「MFCよりも更に冷え切っているもの」のお話をしましょう。
389話から引っ張りましたが、されそれは何でしょう?
それはマスフローに流れる流体(ガス)なのです。

マスフローは前回解説したように温度補正を行っています。
これはセンサーに流れる流体の温度を正確に捉えさえすれば正常に働くという意味です。
逆に言えば、この補正のベースとなる流体の温度を正確に測れていなかったら、前回お見せしたモデルにはならず、補正した結果は大変怪しくなってしまいます。
ここで問題になるのは、マスフローはこの補正情報の元になる流体の温度をどこで測定しているかです。

実は大部分のマスフローは流体の温度を直接測定せず、マスフローのボディや基板上の温度を測定しています。
つまり、流体温度=マスフローの環境温度が前提なのです。
これらに大きな差があった場合、間違った温度情報による補正がかかることになってしまいます。
「それなら温度センサーを流路内に設置して、直絶ガス温度を測って補正情報を得ればよいのではないのか?」と意見もあるでしょうが、流体によっては腐食や反応物の堆積などで正確な温度が測れない可能性がある事を考慮しなくてはいけません。
マスフローの主用途である半導体プロセスガスには、特に腐食性ガスが多いのです。
間接接触での測定は、感度の上で適切なものがなく、感度を得るためには温度センサーを取り付ける接ガス材質をステンレスよりも熱伝導率の良い材質に変更せねばならず、これもまた半導体プロセスでは問題になる可能性があります。

こういった理由でやむなくMFCの周辺環境温度を温度補正に使っているのです。
実際にDecoが経験した事例ですが、MFCにガスを供給している配管に空調が冷気を直接吹き付けていたことでMFCへ過度に冷却されたガスが入り、周囲温度と流体温度との差が大きくなって、温度補正が適切に行われず、流量異常を起こしてしまったことがあります。

寒冷地の屋外では、この問題はさらに深刻です。
なぜならマスフローにガスを供給するガスボンベの設置は、ほとんどの場合、空調の無い屋外環境だからです。
前空調の吹き出しからの冷気程度ならば、吹き出し口の向きを変えるか、空調の風が当たる配管に断熱材を巻くような処置で対応できますが、ボンベそのものから冷えたガスが入ってくる場合は、それほど簡単ではありません。

どうすればこういった問題を解決できるでしょうか?
ガス温度を直接測って、温度補正できるマスフローが開発されない限り、当面は配管施工、マスフローの運用で解決するしかありません。
屋外で空調の無い場所で設置するのだから、あえて屋外のボンベ庫に隣接して耐候型マスフローを設置する事で、同じ温度環境にしてしまうのも手です。
もしくはガスラインがマスフローの設置してあるエリアに入る時点で配管ラインを長く取って温度をなじませるような仕組みを設けるべきですね。
熱交換器というか、スパイラルに巻いた配管でいいので設置してみると効果が出る場合もあります。

いずれにしても「マスフローの周囲温度と流れてくるガス温をほぼ同じにして使わないといけない」という、マスフロー最大の弱点を認識して配管を施工して頂けるとありがたいです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan