真・MFC千夜一夜物語 第370話 ダウンサイジングこそ技術革新の証です その7
マスフローメーター(MFM)、マスフローコントローラー(MFC、MFMとMFCをマスフローと総称。) のダウンサイジングに関して解説していきましょう。
今回からは半導体製造装置向けマスフローの更なるダウンサイジングに関してのお話です。
半導体製造装置はクリーンルームと呼ばれる清浄な環境に設置され、プロセスガスには高純度ガスを使用しています。
微細なゴミだけでなく、接ガス材質からのアウトガス、金属イオンの抽出等にまでに神経を配らなくてはいけない産業です。
そして配管内面のガスや水分が残存するような無駄なボリューム(デットボリューム)の存在も嫌います。
プロセスガスには反応性の高いガス種が多々あり、それによる腐食が避けられないという点でマスフローのダウンサイジングの切り札となるMEMS技術が嫌忌される傾向にあります。
圧縮空気や窒素パージラインでは昨今MEMSセンサー搭載マスフローにも門戸は開かれているのですが、プロセスガスラインへの導入は難しいと思えます。
反面、半導体製造装置は一装置辺りのMFCの搭載台数が圧倒的に多い事もあり、ダウンサイジングへの要求は非常に強いものがありまして、106mmコンパクトMFC、1.5インチから1.125インチIGSへとダウンサイジングが進んできました。
しかしながら、従来の巻線型流量センサーと分流構造を維持したままでは、これ以上のダウンサイジングは苦しいところに来てしまっています。
熱式のMEMS流量センサーを使えないのならば、他の流量検出方式に活路を見出すしかありません。
ここにきてセンサー方式を熱式オンリーから転換するコンセプトで、更なるダウンサイジングを実現できるフォーマット"10mmMFC"に注目が集まっています。
この10mm規格で採用されるMFCは奥行き寸法が10mmという今までのコンパクトMFCの半分以下という薄型 MFCです。
(株)堀場エステックの超薄型マスフローモジュール CRITERION DZ-100 Series という超薄型の差圧式流量検出方式を採用したモジュールや、(株)フジキンのFCS-P という圧力式流量制御モジュールが発表されています。
【10mmMFC FCS-P7000D 出典:(株)フジキン】
ただ、現状ではこの10mmの薄いボディにEtherCAT等の通信基板を収めたり、M12やRJ45の通信コメクターを取り付ける事は難しいと言わざるを得ないので、通信基板はガスボックス内で別置きでの対応になっているようです。
半導体製造装置向けMFCでこの10mm規格が今後どれだけ伸びていくかが、ダウンサイジングを推し進める上でのキーとなるでしょうね。
カバーできる流量レンジ的な問題で、中大流量向けのMFCで巻線型、もしくはMEMS型の熱式流量センサーを搭載した熱式MFCの復権もあるかもしれません。
参考資料:堀場エステック(株)HP 半導体市場における小型高精度マスフロー 長澤 政幸 2018年6月06日
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan
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