真・MFC千夜一夜物語 第358話 超高温用マスフローの現状 その6

2022年03月15日

引き続き高温用マスフローコントローラ(以下MFC)マスフローメータ(以下MFM)に関して、情報のアップデートをしていきたいと思います。
250℃超高温マスフローの開発のお話の続きです。


超高温マスフローを製品化したのは、(株)フジキンでした。
彼らは150℃で止まっていた高温用マスフローの限界温度を一気に250℃まで引き上げたのです。
それを可能にするには2つの技術面でのブレイクスルーがありました。

これは前述の高温用マスフローの2つの問題点をダイレクトに解決するものでした。
1つは流量センサーの温度問題です。
彼らは既に臨界式(圧力式)流量センサーを常温用フローコントロールシステムであるFCS用に開発していました。
FCSの構造は、本ブログでも何度か解説していますが、図のような原理から成り立っています。

オリフィス上流側絶対圧力が下流側絶対圧力の約2倍以上になるとオリフィスを通過するガスの流速は音速となり、ガスの流量はオリフィス上流側圧力に依存することになります。
これは臨界膨張条件と呼ばれています。
この状態で流量は上流側圧力を変動させた時にだけ変動します。

通常の熱式流量センサーを搭載したMFC(サーマルMFC)は上流側圧力変動の影響により制御流量が激しく揺らぎますが、FCSは上流圧をAPCで一定に保つ限り、流量が揺らがないという特長をもっているのです。
サーマルMFCのように供給圧力変動の影響を受けないので、前段にラインレギュレーターが不要となり、ガスシステム全体のコストダウンと設置面積の削減にも貢献できます。

このFCSの測定には圧力センサーが使用されています。
これが超高温対応への鍵となったと思えます。
圧力センサーは高温条件下では寿命の点で熱式ほど短命ではありません。
しかし、高温流体への対応には、確実に不安定要素が増え、寿命も常温用圧力センサーよりは短くなるはずです。

通常の半導体用ウルトラクリーンタイプ圧力センサーでも、従来は150℃以上の対応が難しい領域と言われていました。
感圧部の耐温度性能、受圧するダイヤフラムの歪みへの熱影響というファクターがあるからだと思います。
圧力式にしたからと言って、一朝一夕に250℃超高温マスフローが作れた訳ではなく、そこには産みの苦労があった筈なのです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan