真・MFC千夜一夜物語 第356話 超高温用マスフローの現状 その4
久しぶりに高温用マスフローコントローラ(以下MFC)とマスフローメータ(以下MFM)に関し、情報のアップデートをしていきたいと思います。
高温用マスフロー(MFCとMFMの総称)の問題点は、もう一つあります。
これは高温用マスフロー自体の問題と言うよりは、高温用マスフローの運用上の問題です。
高温用マスフローが自ら昇温機能を持って目標温度まで温度を上げる機能を有している事は希です。
セルフヒーティング型と呼ばれるヒーターユニットをオプション装着した製品もありますが、それはあくまで装着したオプションにその機能があるという事で、本体を購入した装置メーカーやユーザー側で昇温方法を準備する方が圧倒的に多いのです。
昇温する方法は、図のように恒温槽を用いるか、配管系にヒーターを配置して、温調器で制御するかです。
昇温するときに留意すべき点は、コールドスポットを作らない事です。
コールドスポットがあると、せっかく気化した材料が再液化してしまいますからね。
高温用マスフロー部のヒーター温調は他の配管系と独立させて温度制御を行う方が、より効果的な場合もあります。
高温用マスフローのSUS316Lのボディは他の配管機器や配管より確実に容積が大きい=熱容量が大きいので、一緒に温度制御をかけた場合、温度センサーの位置によっては高温用マスフローだけが充分に昇温されずコールドスポットと化して、材料が再液化するトラブルが生じてしまいます。
そもそもは昇温して気化した材料を再液化しないよう配管系を温めるのですから、基本的に図のような「下流側に行くに従ってヒーター温度を上げる=温度勾配を付ける」という手法が推奨されます。
しかし、気化器以降の配管システムに最適な温度勾配を与えるというのは、実はなかなか難しいことなのです。
闇雲に下流側の温度設定を高くするだけでは、上手くいかない事が多いです。
なぜならばマスフロー以外の配管機器にも個々に熱容量差があるからです。
また、ヒーターから均一に熱をかけることも難しいです。
ヒーターの温度制御に使われる測温抵抗体の設置場所による温度情報の誤差、そして温度制御を行う温調器自体の性能や器差等、詰めていくべき要素は多々あります。
また、テープヒーターの巻き方や設置手法にも施工者の熟練度の差も考えなくてはいけません。
配管にはストレートな部位だけではなく、曲げがあったり、エルボー、クロスなどの継手があったりするので、ヒーターを密着させるのはなかなか難しく、どうしても空気の層が間に入ってしまい効率の良い伝熱を妨げます。
その点では配管を組むやり方より、最近の半導体製造装置のガス系で用いられているIGS(Integrated Gas System)での昇温システムの方が、ヒーター施工スキルの差が生じにくいという利点がありますね。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan