真・MFC千夜一夜物語 第354話 超高温用マスフローの現状 その2
久しぶりに高温用マスフローコントローラ(以下MFC)とマスフローメータ(以下MFM)に関して、情報のアップデートをしていきたいと思います。
高温用マスフロー(MFCとMFMの総称)と常温タイプの外見上の差異は明確です。
マスフローというお弁当箱が直立したような形の機器は、その外観では機能を計りかねる製品で、どれもが同じような形状であるのに対して、高温用マスフローだけは非常にわかりやすい構成を取っています。
上図に高温用MFCの構成と配管設置例を示しました。
高温用マスフローは、高温環境に設置する「メカ部」と、常温環境に設置しなくてはいけない「基板部(電気部)」で構成されています。
マスフローの構成部品の耐熱温度は個々に異なります。
高温環境で一番先にアウトになるのは電子部品です。
電子部品の場合、そのほとんどが80℃以下の温度仕様であることが多い事は皆さんよく御存知かと思います。
こういった高温環境に弱い電子部品で構成される基板(PCB)部をマスフロー本体から分離して、常温環境に設置する構成をとったのが高温用マスフローなのです。
本来、常温用、つまり一般的なマスフローは制御回路などの電気部品と、センサーやバルブアクチュエーターのメカ部品が一つのケースの中に同居しています。
高温用マスフローではそれらを常温に置く基板部と、高温環境に置くメカ部の2つに分離しているのです。
一つのマスフローを無理やり二分割した異形なマスフローだと言えるかもしれません。
高温用マスフローという形態は、マスフローにとってあまり好ましいパッケージではありません。
センサーの温度をより高温とすることで熱式流量センサーとしての感度は獲得できますが、それと引き換えにセンサー巻線の寿命を著しく削ってしまうからです。
センサーに用いられる巻線はニクロム線です。
ニクロム線は一般的に150℃以上の温度になると経時変化から抵抗値が変化し、断線に至るスピードが極端に早くなる傾向があります。
その事はマスフローメーカー側もわかっていて、高温用マスフローは、敢えてセンサーの寿命=製品の寿命を犠牲にして作られた存在なのです。
産業用機器としては、いささか無茶な製品であると言えるかもしれません。
また、高温用マスフローはメカ部と基板部が分離しているという基本構成を取っていますから、センサー基板も常温ゾーンにあります。
つまりセンサーのブリッジ回路から得られる生出力を増幅し、直線性補正や温度補正する回路がセンサーから遠く離れた常温ゾーンにある基板部に存在しているのです。
これは熱式流量センサー特有のSN比の悪い微弱な電圧信号が数メートル単位で伝送されることを意味しています。
この生出力は数mV単位の微弱な出力であり、ノイズ影響や減衰を考えると、メカ部と基板部を結ぶ耐熱ケーブルを極力短くした方が良いのですが、せっかく分離したのですから、基板部は高温ゾーンには近づけたくは無いという相反する要求の板挟みにもなります。
これらの特性を理解した上で、ユーザーは細心の注意で高温用マスフローに接しなくてはならないのです。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan