真・MFC千夜一夜物語 第352話 圧力式フローコントローラーの現状 その6

2022年01月07日

謹賀新年。
本年もEZ-Japan BLOG、真・MFC千夜一夜物語を、宜しくお願いいたします。
新年は1/11のブログ更新予定でしたが、皆さん既に仕事始めの方も多いようですので、1/11更新予定分を前倒ししてアップさせて頂きますね。

さて、昨年から続いております半導体製造装置市場向けで注目を集めている圧力式フローコントローラーに関する解説です。
各メーカーの圧力式フローコントローラーを俯瞰していますが、解説にはDecoの主観が入っています。
鵜吞みにせずに詳細は各メーカーさんに確認してくださいね!

④ ブルックス GP200シリーズ

圧力式では日本のMFCメーカーに出遅れていたブルックス・インスツルメント(Brooks Instrument, LLC 日本法人 ITWジャパン(株) 以下ブルックス)は、2020年になって堀場エステック、日立金属同様にラミナーフロー方式の圧力式フローコントローラー GP200シリーズをリリースしました。 他社製品との違いは、ラミナーの上流用P1、下流用P2に絶対圧センサーを2個装備するのではなく、1個の差圧センサーに統一して対応している事です。

この構造は、実はラミナーフロー方式の流量測定方法としては、王道を行く構成です。
以前取り上げたALICATのラミナーフロー方式フローコントローラーも差圧センサー(絶対圧対応)を搭載している点で似通っていますが、純粋な半導体向け用途ではブルックスが初めてではないでしょうか?

差圧センサーの部品コストは安価ですし、搭載する2つの絶対圧センサーの器差を少なくするという品質上の厳しい要求を抱えるラミナーフロー式にとっては、差圧センサーで対応するのは、好ましい判断に思えます。
流量制御バルブを下流に配置することで絞りとして機能させることにより、二次圧変動影響を抑制し、差圧センサーを安定した環境で使用する事ができる構成も、流石によくわかっているなぁ感があります。
ラミナーフロー方式の原理を忠実に再現したところは、日立金属 PS100シリーズと同じです。

まだ市場に出て間もない事があり、評価はこれから定まっていくかと思います。
本来差圧式センサーは耐圧性能に乏しく、急激な圧がかると破損しやすいという欠点を持っている点が気がかりではあります。
同様の構造で一般工業向けに販売しているALICATがこの問題に頭を悩ませていた事は、老舗のブルックスは十分承知していると思いますので、何らかの対策が盛り込まれているのではないでしょうか?それらを含めて、現時点では市場の評価待ちという状況です。

半導体製造装置向け圧力式フローコントローラーが世に出て20年は経過しています。
その中で先駆者たるフジキン、そして技術をM&Aで上手く取得した堀場エステックの2社が、大切に製品を熟成していった結果、この先の10mmMFCの世代で一気に熱式とのシェアをひっくり返す存在にまで成長しているようです。
そして、それに日立金属とMFCの老舗ブルックスの圧力式がどこまで迫っていけるかは、今後非常に楽しみですね。
また、今回は取り上げていませんが、PIVOTALのような全く考え方の異なる"圧力式"も存在しています。
Decoのような熱式、それも巻線式のマスフローコントローラー(MFC)で育った世代からすると、少し寂しい気もしますが、こういったドラスティックな変動に立ち会えるのは、大変面白い事です。
本ブログでは今後も新しい技術動向を紹介していきたいと思っています。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan