真・MFC千夜一夜物語 第350話 圧力式フローコントローラーの現状 その4

2021年12月07日

半導体製造装置市場向けで注目を集めている圧力式フローコントローラーに関する解説です。
前回から一社ずつ各マスフローメーカーの製品を俯瞰していってます。
解説にはDecoの主観が入っていますので、鵜吞みにせずに詳細は各メーカーさんに確認してくださいね!

② 堀場エステック CRITERIONシリーズ圧力式フローコントローラーの開発が盛んになった2000年代、米国でFuGasity Corporationというベンチャー企業が、体積流量計であるラミナーフロー流量計の原理をアレンジしたUS特許を取得し、圧力式フローコントローラーを発表しました。
2003年に (株)堀場エステック(以下堀場エステック)はこのFuGasity Corporationの事業を買収し、圧力式フローコントローラー"CRITERION"シリーズの製造権、販売権、技術特許を取得しています。
"CRITERION"シリーズはラミナーフロー方式(堀場エステックでは「層流粘性流域差圧検出方式」と呼称)であり、理論上高い精度での計測が可能です。

ラミナーフロー方式は、臨界ノズル方式と並んで、国家の流量標準移管器として採用されるなど、理想的な気体流量測定方式です。
フローコントローラーとして考えた場合、ラミナーフロー方式の一番の長所は、他の圧力式と比較してワイドレンジ対応が容易な事です。
しかし、真空領域での用途がメインである半導体製造装置で使用するには2つの問題点があるとDecoは考えていました。

① 超高真空下の密度の低い気体の流量測定に用いるにあたって、P1、P2の2つの絶対圧センサーの器差が問題となること。

② ラミナーフロー方式は、熱式のように流体固有の物性である比熱に支配されない代わりに、同じく固有の値たる粘性に支配されます。
つまり熱式と同様にガスによるコンバージョンファクター(CF)が存在してしまうこと。

①に対しては、絶対圧センサーの性能と器差の縮小をハードウエア的に熟成していくしかありません。
②に対しては、CF、つまり実ガスとの変換係数を設定する為のガスデータの蓄積が必要になります。
熱式マスフローコントローラー(MFC)もMGMR対応に当たっての実ガスデータベース作成が求められていた背景もあり、堀場エステックは福知山テクノロジーセンター等で実ガス流量測定装置等の設備を準備してガスデータベースを構築しています。
こういった表舞台にあまり出ない部分で技術データの蓄積を、確実に行ってきているのは流石にトップメーカーだなぁと感心させられますね。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan