真・MFC千夜一夜物語 第345話 MFCだって自動運転! その8
マスフローコントローラー(MFC)の自動運転のあり方に関して、お話をしています。
「MFCに勝手をさせず、装置のオーダー下に置くのには、絶好の機会が訪れている」と前回お話ししました。
では、技術的な面で「産業用イーサーネット"EtherCAT"のような高速産業用ネットワークが装置のデフォルト通信規格となる」事がMFCの自動運転とどういった関係があるのでしょうか?
EtherCATを含む産業用イーサーネットの躍進は、2021年5月11日のMFCニュース"産業用イーサーネット vs フィールドバス マスフローでの対応"でも取り上げました。
ここで少しEtherCATの解説をしましょう。
EtherCATはドイツのベッコフオートメーション(Beckhoff Automation)によって開発された、イーサーネットと互換性のあるオープンな産業用ネットワークです。
相互互換性を保つことを目的に、2003年に設立されたEtherCAT Technology Group(ETG)よって管理されており、加盟企業は国内300社、世界では2400社にも及びます。
EtherCATの最大の特長は、これまでのフィールドネットワークによく使われていたポーリングや、時分割、ブロードキャストのようなリアルタイム通信方式とは"全く異なるリアルタイム通信方式"を採用している事なのです。
EtherCATは、ハンドシェイクではありません。
ハンドシェイク通信は、相手の処理を待ってから先に進みます。
互いの状態をしっかりつかんで行う手順なので、ハンドシェイク(握手)と呼ばれているのです。
ところが、EtherCATでは、マスターから出発するパケットは、全てのスレイブを順番に通過して、最終端まで行ったら折り返して再びマスターへ戻っていくようになっています。
EtherCATでは、これを"1サイクル"とした伝達方法で全入出力処理を終えるのです。
使用されるイーサネットフレームのデータ部には、スレイブ毎に出力/入力データビットが与えられていて、各スレイブは自分に与えられた位置に送信データを書き込みます。
フレームから各ノードで受信データの読み込み、送信データの書き込みが完了したら、各スレイブは受信データを読み込みます。
その流れを下図に表してみました。
従来の通信の流れとは異なる事に気づかれたのではないでしょうか?
今までのフィールドバスや他の産業用イーサーネットでは、スレイブ個々にIPを振り当てて通信を行っているが為に、いくら高速通信対応を謳っていても、マスターが1台のスレイブと通信している間は、他の1台と通信できないという落とし穴があり、スレイブが増えるほど、それが実質的なネットワークの通信速度を下げていたのです。
それに対してEtherCATはその理論上の最高速度 100Mbpsを有効に使えるハイスピードネットワークなのです。
実はこの通信ネットワークの実質的な高速化が実現したことで、MFCはある運命の分かれ道に立たされることになります・・・
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan