Decoの選ぶサーマル マスフローコントローラの究極形 ~ EL-FLOW Prestige その2

2021年08月31日

以前、Decoの選ぶサーマル マスフローコントローラの究極形 ~ EL-FLOW Prestige という記事を書きましたが、その続きです。

EL-FLOW Prestige PIモデル F-111BP & F-201CVP 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

今回紹介するのはEL-FLOW PrestigePI(Pressure Insensitive)モデルである、サーマル(熱式)マスフローメーター(MFM)のF-111BPとマスフローコントローラー(MFC)のF-201CVPです。

「なんだ・・・PI-MFCは、どこのメーカーでも出しているよね?」
という声が聞こえてきそうですね・・・

でも、このブログを読んでもらってる読者ならば・・・
「え?PIってMFCはあっても、MFMは無いのでは?」
という疑問を持たれたかもしれません。

その通りで、ブロンコストのPIはそもそも他社のPIとは意味合いが異なるのです。
「一次側圧力が変動した際に、MFCの流量制御が受ける影響を最小限にする」のが、一般的なPI-MFCなのですが、EL-FLOW Prestigeでブロンコストが提唱したのは、「温度・圧力条件が変わることで流体の物性が変化しても、補正により正確な実ガス流量を測れるMFM/MFC」なのです。
圧力変動が影響を及ぼす箇所は、流量制御バルブではなく、流量センサーであり、それを補正するという考えなのですね。
はい、これが熱式流量センサーを搭載するMFM/MFCの最大の弱点でした。

上図にあるように、熱式流量計の流量式にはCp:流体の比熱(定圧比熱)が含まれており、この値を押さえる=流体種を特定して、温度・圧力のマトリクスから定圧比熱を導き出す必要があるのです。
この値が不正確ならば、得られた流量値も不正確なものになってしまいます。
また、熱式流量センサーは、それ以外にセンサーが層流素子(バイパス)との分流構造になっているものがほとんどであるために、この分流比も流体の温度・圧力による密度、粘度の変動影響を受けています。

要は熱式流量センサーをちゃんと動作させるためには、実はリアルタイムで温度・圧力を測定して、最適な値をコンバージョンファクター(CF)として選択して流量センサーからの生出力を補正しないとないといけないのです。(このお話はマルチCFの話とも絡んでいますので、そちらもお読みください。)

今までのマスフロー(MFC&MFMの総称)はそれができていませんでした。
そこに踏み込んだからこそ、EL-FLOW PrestigeはDecoの選ぶサーマル マスフローコントローラの究極形なのです。

EL-FLOW Prestige 取扱説明書にも以下の記載があります。

An innovative static compensation algorithm ('FLUIDAT On Board') uses the actual fluid temperature and pressure to calculate fluid properties in real time. Density,viscosity, thermal conductivity and heat capacity of the processed media changeunder the influence of pressure and temperature.

The Fluidat On Board algorithm continuously recalculates these properties and uses them to adjust the gas flow.

シングルCFの頃は、どんな流量レンジでも、温度・圧力条件でもCFは1個と決まっていました。
それでは対応できない流体、プロセスがあることがユーザーからの指摘で分かってきたので、マルチCFへとマスフローは進化しました。
これを実ガス流量保証とか、MGMRという呼称で販売しているのです。

ブロンコストのマスフローをご紹介する時に、圧力条件等をしつこく確認させていただくと、ユーザーさんからは
マスフローだし、適当で大丈夫でしょう?」
とか、
「他のマスフローメーカーはそんな細かい事を聞かないよ。」
と言われることがあったのですが、実はこういった背景でマルチに存在するCFから最適なものを選ぶためだったのです。

ですが、そのマルチCFモデルでも温度、圧力条件の変化にリアルタイムでCFを再計算して対応できるわけではなかったのです。
ついにそこを突破して、内蔵した温度センサー・圧力センサーで情報を得て最適なCFをマスフローが自動で選択することができるようになったのです。

前にもお話ししましたが、このコンセプトはDecoも日本のマスフローメーカーで実用化しようと考えていたのですが、諸事情で断念した"LAST IN LINE"という開発コードのMFCと同じなのです。

流石にブロンコスト!と思わせるサーマルマスフローの究極形 ~ EL-FLOW Prestige
是非お試しください。

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