真・MFC千夜一夜物語 第341話 MFCだって自動運転! その4

2021年07月20日

MFCは車のように自動運転ができるか?というお話です。MFCが流量設定信号(SV)> 流量出力信号(PV) の状態で、バルブ全開待機状態にならないようにSVが2%未満で入力された際は、流量制御を打ち切り、バルブをフルクローズで待機するゼロシャット機能、オートシャットオフ機能のご説明をしました。

こういった機能は、MFCが暴走するからではなく、逆にSV=PVになるように流量制御をまじめにしようとするからこそ、生じるトラブルです。今回お話しするPI-MFC(Pressure Insensitive MFC=圧力変動影響緩和型MFC) に関しても同じことが言えます。

PI-MFCも従来のMFCの流量制御、車で言うところの設定した速度と実際の速度が一致するようにエンジンの回転数を制御するオートクルーズでは、問題が起こるようなケースに対処するMFCなのです。

ガスボンベから供給されたガスが、その下流に1台だけMFCがあって流量制御しているのならいいのですが、が複数のラインに分岐して、各々のラインでMFCが流量制御をしている場合、MFC1が流量制御中にMFC2も動き始めた際に、図のような現象が発生します。

急にMFC2側のバルブが開いた為に、ガスボンベからのレギュレーターが払い出す量が足らなくなる事で、MFC1の供給圧が下がってしまいます。
その結果、MFCへ流れ込む流量が減ってしまうとMFC内部ではPVがダウンして、PV<SVという現象が生じてしまいます。
MFCはPVがSVと一致するようバルブ制御信号(MV)を増やす=バルブを開いてしまうことで対応しようとするのです。
この制御自体は、MFCの自動制御として当たり前の動作を行っているのですが、この結果、MFCのPVのログにはスパイクが入り、流量低下による成膜やエッチング工程への影響や、もし実際に害が無視できるレベルだったとしても、流量波形に異常を検知した装置が警報を発報したり、インターロックがかかってしまったりするのです。
MFCとしては当たり前の流量制御を行っている事が、困った事態を引き起こしてしまうことになるのです。

本来この対策は下の図のように各ラインに調圧器(ラインレギュレーター)設けるか、もしくは上流にバッファーの役割を果たすタンクを設ける事で対応は可能なことはわかっていました。

ところが各ラインに調圧器を設置するのもそれなりにコストがかかり、場所を占有してしまいます。
「MFCを補う為なのだから、MFCメーカー側で何とかしなさい!」と、どなたかがおっしゃったのでしょうか?
お客様にそう言われたら、本当はMFCが悪い訳ではなくても、なんらかの対策を考えないといけませんよね。
そこで、圧力センサーを使ってMFCの上流側で急峻な圧力変動が生じた際は、自動的にMFCにSV=PVとするようにMVを自動制御するのをやめろ!」と指示する機能を搭載したMFCがPI-MFCとして市場に提供されるようになったのです。

MFC側から考えてみると、何ともおかしな話なのですが、MFCに待ったをかける事ができる=ブレーキを踏む機能を持つMFCがPI-MFCなのです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan