真・MFC千夜一夜物語 第340話 MFCだって自動運転! その3

2021年07月13日

MFCは車のように自動運転ができるか?というお話です。
前回のお話は、MFCへのガス供給を遮断している際に、MFCに流量設定信号(SV)が入力されたままになっていたら、まずいよね!というお話でした。SV=流量出力信号(PV)となるように、バルブ制御信号(MV)を増減するのがMFCの自動制御だからです。

故にMFCは決しておかしくなってしまったわけでもないのに、ガスの再導入時に過大な流量が流れ込むガスサージが起きて、真空チャンバーの真空度が悪くなったり、チャンバー内のゴミを巻き上げてしまったりという被害を発生させてしまいます。

これを防ぐ為に、SV=0にして置くのも手なのですが、MFCの流量センサーは微小な熱のバランスをブリッジ回路で取り出している為に、その上流、下流にある測温抵抗体の抵抗値が経年劣化してバランスを崩すと、実際は流れが0でもマイナス表示をしてしまうことがあります。
ゼロずれ、ゼロドリフトという問題ですね。

この現象が起きていると、たとえSV=0でも、やはりSV>PVという状態が発生して、MVは最大値になり、バルブは全開待機してしまいます。
ゼロがずれなければいいのですが、なかなかそう上手くもいかないものです。
中にはSVにマイナスの値を入力するようにした装置メーカーさんもおられましたが・・・

ここでMFCメーカーにうまい方法を考えた人が居ました。
Decoが今でも業界有数のアイデアマンだったと思っているTさんです.
MFCの流量制御範囲は、多くの場合、2-100%F.S.(ターンダウン 1:50)です。
*最近は1~100%F.S.や0.5~100%F.S.というワイドレンジモデルもあります。
これは「2%未満の制御信号を入れても流量制御は保証しません。」という意味です。(必ず制御できないわけではなく、ただバルブの出流れ量とゼロドリフトの相対的な流量制御性能への影響が大きくなるので、流量が変化しなかったり、流量制御精度が悪かったり・・・要は使い物にはならないリスクがあるからやめてくださいね、という意味です。)

いきなり脱線ですが、過去にカタログにも2%迄と書いているのに、「1%で制御したいんだ!できないのはけしからん!」というクレームを頂いたことがありました。ま、お客様側の仕様見落としだったのですが、まだ若かったDecoはカチーンときて、「お客様がお乗りになっている車でも、常に時速1kmで進む制御ってできますか?できませんよね?その事でメルセデスに文句を言ってみました?」と、やり込めてしまったことがあります。
いやぁ、若かったなぁ・・・
あの時のお客様、読んでおられたら、ごめんなさい。

「2%未満は流量制御の保証ができないんだから、使わないよね?よし!この領域を有効活用させてもらおう!」
という発想で、TさんはSVがF.S.の2%未満になった場合、強制的に流量制御をやめさせて、バルブ閉モードに切り替えるというモードをMFCに追加したのです。
このモードをオンにして、SV=0を入力すれば、SV=PVに仕様とする制御は中断され、MFCの流量制御バルブは強制閉モードに入ります。
この機能はオートシャットオフ機能、ゼロシャット機能等と呼称され、色々なMFCメーカーが採用してトレンドになった機能だったのです。

 【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan